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〘91〙高談放論
しおりを挟む性交中に、口移しで睡眠薬をのまされたハルチカは、タカムラの寝台で寝息を立てている。
タカムラは前髪を指で掻きあげると、煙草をくわえて火を点けた。見物人として居坐らせたキリコは、少し前に枕席の指名がはいり、呼びにきたアカラギと共に壺の間へ向かった。時間を持て余すタカムラは、一服すると、ふたたびハルチカに蔽いかぶさり、無防備な肌へ舌を這わせた。深い眠りにつくハルチカだが、ときおり「ぁッ」と息を吐き、小さく反応を示した。体内領域に巨根を押しこまれた瞬間、ビクンッと下肢に力がはいるが、タカムラの抜き挿しを拒絶するようすはなく、ドプドプと腹底に精子を放流されても、目を覚ますことはなかった。
夜半すぎ、コンコンと扉のたたく音がしてあらわれた人物は、寝台のハルチカに目を留めた。身なりを整えて長椅子に坐るタカムラは、帳場の仕事を片付けてきたヒシクラに「ご苦労」と声をかけた。数秒ほど遅れて、アカラギも到着した。夜鷹坂を築きあげる三人の男は、それぞれ円卓を囲んで坐ると、なにも知らずに眠るハルチカをよそに、定例会議を始めた。
「まず、これが今期の決算だ。」
帳場のヒシクラは、年末に必要な書類をまとめて提出した。売上高の最終見込みは、去年の三倍にまではねあがっている。トキツカサ財閥との協力体制もあり、経営資金の調達は解決され、事業の拡大や特定の分野に着手することもできた。アカラギは、男娼の個人成績を記した筆記帳と、いくつかの封筒を手渡した。タカムラは会話を中断し、しばらく書類に目を通した。「うぅ~ん」と、寝返りをうつハルチカの肩から掛け布団がすべり落ち、胸もとや腹部が目視できた。ふだんの寝相はまともだが、こんなときにかぎって膝を立てるハルチカは、陰部が露出した。さすがに、見ていられないヒシクラは腰をあげ、掛け布団を躰にもどしてやった。
タカムラは、今期の成績から来年度の予算をわりだして新しい帳簿をヒシクラへ用意すると、アカラギに意見を求めた。
「来春、他処の土地を購うことにした。治安を調査したところ、要人の別邸が立ち並ぶ区域に近い。トキツカサの息もかかっている。夜鷹坂の看板は、注目を集めるだろう。」
「娼館を建てるおつもりですか。」
「むろんだ。おまえには、異動辞令をくだすことになる。」
ハルチカの寝顔を見おろすヒシクラは、タカムラの計画を知らなかったわけではないが、「まさか、二号店の責任者をラギにやらせる気か?」と、口をはさんだ。これまで、楼主の指示に服従してきたアカラギは、「問題ありません」と即答した。「おいおい、そんな大事なことを三秒できめるなよ」ヒシクラは、ガシガシと後頭部を掻きながら席にもどると、アカラギが去ったあとのハルチカを心配した。
「いいか、ラギ。確かにおまえは有能だが、新天地ってのは、そう簡単に治められるもんじゃない。……娼館の楼主って面構えでもないしな。」
「俺の肩書きは、なんだって構わない。どこにいようと、仕事をするだけですよ。」
「だがな、ハルチカはどうなる? おまえがイチから育てた男娼だぞ。見捨てるのか。」
ヒシクラは冷静な声で云う。寝台ですやすや眠るハルチカは、事実を報されたとき、アカラギに置いていかれたと悲しむはずだ。異動辞令まで猶予はあるが、アカラギの承諾を得たに等しいタカムラは、早口になるヒシクラを見据え、眉をひそめた。ハルチカの思いを代弁するよりも、権利書の使い道を考えるべきである。ヒシクラは、最善の方法を失念していた。
✓つづく
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