曙花町男娼夜鷹坂

み馬

文字の大きさ
上 下
90 / 165

〘90〙難関突破

しおりを挟む

 思ったとおり、アカラギと過ごす夜は、三日前の性教育が最後となった。週末をむかえず、楼主の部屋に呼びだされたハルチカは、判定をくだされるときがきた。

「ダンナさま、ハルチカです。」

 今夜は休業日ではないため、一階の客間から、芸者がかなでる楽器の音や、賑やかな話し声が聞こえてくる。ハルチカはゴクッと唾を呑むと、廊下で腰紐をゆるめておき、「はいれ」と返すタカムラの声を待って扉をあけると、パサッと肩から着物を床へ落とした。全裸で「失礼します」と挨拶するハルチカは、さげた頭を持ちあげた瞬間、青ざめた。

「キ、キリコ!?」

 長椅子ソファくつろぐ、、、、タカムラのとなりに、キリコが坐っている。優雅に舞う鶴の振袖が、上級男娼の品格を高めていた。あわてて床に落とした着物を羽織るハルチカを見て、笑みを浮かべた。

「べつに隠さなくていいのよ。ダンナに見られて困るものなんて、わたしたちは持っていないでしょう?」

「キリコが、どうして……。ダンナさま……、これはいったい、どういう……?」

 愕然とするハルチカだが、これまでの経緯に思考をめぐらせ、状況を理解した。これは試験などではなく、試練なのだ。夜鷹坂で唯一の上級男娼であったキリコを、納得させるような性交渉を披露しなければ、タカムラの面目さえ保てなくなる。ハルチカは、強い意志でのぞむ必要があった。

 楼主の部屋には、木製の寝台ベッドが備わっている。初日しょじつのお披露目で、タカムラと抱きあった寝台だ。キリコは長椅子にいて、動く気配はない。ハルチカは毅然とした態度で寝台に歩み寄り、着物を脇におくと、ギシッときしませた。

「……よろしくお願いします。」

 寝台に腰をかけたハルチカは、キリコの存在は気になるが、タカムラの言動に集中した。「手淫をしろ」といわれ、「かしこまりました」と応じる。

「……んッ、んッ、……ハァッ、」

 必死に指を絡めて身体反応を誘発するハルチカは、見物をきめこむタカムラとキリコがうらめしくなるが、なんとか濡れることができた。

「ハァハァッ、ダンナさまも……、どうか、こちらへ……、」

 ひとりではやるせない気分になるため、タカムラの温もりを求めると、「よかろう」といって立ちあがり、シャツのボタンを解き、ズボンのベルトを外した。キリコはまばたきを忘れるほど、じっと、ハルチカのようすを観察している。タカムラはハルチカの膝を摑んで股をひろげると、体内へ二本の指を挿入し、浅いところにある性感帯を刺激した。トントンッ、グニグニ。

「あッ、あぅッ! あんッ!!」

 タカムラの指づかいにより、無理やり興奮状態となってゆくハルチカは、腰を浮かせてしまった瞬間、ズブッと、深部まで這入りこまれた。

「ひァッ!? ぅッ!!」

 タカムラの中指はアカラギよりも長いため、絶対領域を自衛できず、一方的に侵入されても、拒むことはできなかった。

「あッ、あッ、そこは……、あぅッ!? んぁッ!!」

 巨根では到達できない最深部を指先で攻められるハルチカは、寝台のうえで「あァあッ!!」と身悶えた。タカムラは二度目の射精を見届けると、ハルチカの胴体を起こし、ズプッと肛交した。居茶臼の体位で下から腰を突きあげてくるタカムラは、ハルチカの背中を片腕で支えながら乳首に吸いつき、もう片方の手で陰茎の尖端を揉みこんだ。前とうしろを同時に煽られるハルチカは、刺激と快楽で飛びそうになる意識のなか、微かに笑うキリコと目が合った。タカムラの運動が激しくなると、ギシギシと軋む寝台の音も強くなり、ハルチカは必死でタカムラの首筋にしがみついた。


✓つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...