88 / 200
〘88〙両手に花
しおりを挟むタカムラが去った茶室で、ハルチカは仰向けの状態で脱力していた。弄ばれたような気もするが、吸われた乳首がジンジンと熱をもち、隠された欲望を煽っておきながら、下半身には触れず放置された。
「……なに……これ。……なんなの、あの人? ……こんなふうに、触れてくるなんて、はじめて……だ……、」
タカムラの口づけや乳首を吸われる感触が、これまでにないほど気持ちよすぎたハルチカは、ガバッと上体を起こした。茶室の扉が、少し開いている。廊下に人の気配がして、あわてて坐布団を引き寄せると、ヒョコッと、モモコが顔を見せた。
「ハルちゃん、」
「モモさん!」
「ごめんね。見ちゃった。……旦那さまったら、ハルちゃん(の乳首)が可愛くてしかたなかったのかな。」
「か、かわいい?」
「でも、こんな話をしたら、ヒョウくんが妬いちゃうかな。……わたしもね、ハルちゃんの肉体には興味があるの。……ちょっとだけならいい?」
「ちょっとだけって、なにが? モモさん?」
摺り足で寄ってきたモモコは、ハルチカの着物に腕をのばし、裾を持ちあげた。以前、ヒョウエにも同じような行動を起こされたハルチカは、モモコの見たいものを察した。
「わあ、すごい。ハルちゃんの、とってもきれいね。」
「あ、ありが……とう……?」
「じゃあ、わたしのも見せてあげるね。……ほら、ハルちゃんのと、全然ちがうでしょう。」
「モ、モモさん……、」
互いの下半身を見比べる状況に、ハルチカは動揺した。モモコの下腹部は、性毛を剃刀で処理するたび皮膚が赤く腫れてしまい、逸物もほそめで、男娼としては見栄えが悪かった。むろん、枕席での評価にかかわる部位は体内領域につき、見た目の不具合は、そこまで深刻な問題ではない。
「おい、ふたりとも。いつまで珍子をながめてる気だ? そんな恰好をしていると、風邪ひくぞ。」
茶室にあらわれたヒシクラは、ハルチカとモモコの下半身を交互に見、溜め息を吐いた。ふたりは、露出させている部位をあわてて隠したが、ヒシクラに「がははっ」と大笑いされた。
「そ、そんなに笑うことないだろ!」と憤慨するハルチカと、「そうです、そうです!」と顔を真っ赤にして恥ずかしがるモモコは、「せーの」と息を合わせ、同時にヒシクラへ飛びついた。「おっと」といって身を反らしてかわすヒシクラは、よろめくふたりが転倒しないよう、腕を差しのべた。
「襲いかかってくる男娼ってのも悪くはないが、どうせなら素っ裸になって、壺の間でやってもらいたいね。」
グイッと、太い腕で胴体を引きもどされたハルチカとモモコは、顔を見合わせて笑顔になった。
「あはっ!」とハルチカが吹きだすと、モモコも「あははっ!」と笑った。ヒシクラの左右の腕にしがみつき、しばらく三人でじゃれ合っていると、「ヒシクラさーん!」という、サイキチの声が聞こえた。
「ここだ、サイキチ。どうした?」
「失礼します。わッ! す、すみません、お取り込み中でしたか!?」
ヒシクラをふたりがかりで畳のうえに押し倒そうとしたハルチカとモモコだが、腕力で勝てる相手ではなかった。ハルチカ、モモコ、ヒシクラの順で躰ごと乗っかっていると、サイキチに誤解された。
「ちがうから!」と、いちばん下でバンバンと手のひらで畳をたたくハルチカが反論すると、ヒシクラはモモコに自重を乗せるのをやめ、「廊下の電灯がチカチカ光ってて、切れそうなところがあるんです」というサイキチに、「よし、行くか」とこたえ、茶室をあとにした。
✓つづく
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説




身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる