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〘64〙相思相愛
しおりを挟むアカラギと、ふたたび公認の仲(性教育の延長)となったハルチカは、翌日の枕席で、じぶんでもよくわからないうちに、あんあん悦がっていた。
壺の間での性交により、ハルチカの体内に蓄積されていく不純な穢れは、誰よりも深く結合可能なアカラギの精水によってしか洗浄できない。いわゆる、定期的に好きな男とお清めセックスをすることで、精神面の気枯れを祓い、肉体的にも浄化作用が期待できた。実際、アカラギに対してハルチカの細胞は極端なほど敏感に働くため、効果抜群となるはずだ。挿入と射精を伴う行為は極めて濃密だが、子孫を残すことが最大の目的とはかぎらない。楼主のタカムラは、ハルチカの欠点を見抜き、もういちどアカラギと濃密な時間を過ごす機会をあたえた。
「良かったじゃないか。」
枕席での役目を果たし、使い切ってしまった軟膏の容器を返却して新品と交換してもらうハルチカは、帳場に坐って作業するヒシクラから、頭をポンポンと軽くたたかれた。
「なにがさ、」
「そう知らん顔するな。週イチで、ラギと性交渉するんだろ。」
「し、しないよ(定期的って、週に一回って意味だったの?)。あれから、ダンナにはなにも云われてないし、哥さんだって忙しい人だから……、」
あれからとは、ハルチカのほうから楼主の部屋を訪ねた日のことである。これ以上、周囲の人間を巻き込んで面倒をかけたくないと思ったハルチカは、タカムラに直談判した結果、意外な方向で帰結した。
「まあな。ラギはラギで、なにかしら考えがあって動いているのだろうし、おまえさんとの関係も、そのうち本格的になるさ。」
役不足な現状を否めないヒシクラは、ほんの少し悔しいと思えたが、ハルチカの頬が、ほんのり紅く染まるのを見、小さく肩をすぼめた。どんな不都合が生じようと、ハルチカの思いが揺らいだことは、いちどもない。不安定になりやすい感情は、あくまで、男娼として物事を考えているからであり、忠告や支えが必要な場面では、第三者が手を差しのべている。花町で確実に成長を遂げるハルチカだが、弱点が明白なぶん、どこか危うさがつきまとっていた。
「ハル、見っけ!」
帳場で立ち話をするハルチカを三階の廊下から見つけたヒョウエは、バタバタと足音を立てながらおりてくると、ガバッと抱きついた。
「ヒョウエ、なに? どうしたの?」
「ハル、いいにおい。もう風呂にはいってきたのか?」
「はいったよ。ヒョウエはこれから?」
「うん。おなかに精液たっぷり満タンなんだ。中出しされるのは気持ちいいけど、あとがちょっと面倒だよな。そのままだと、いつ漏れるかわかんねぇし。……どっかで、ラギを見なかった? おれ、じぶんで掻きだすの下手なんだよ。」
「おれの指でよけりゃ、手伝ってやるぜ。」と、ヒシクラが口を挟む。
「おっさんって、そんなことできンの?」
「見くびるなよ。先に風呂場で待ってな。鍵を掛けたら、すぐ行く。」
お仕置き部屋の惨事から、自力で回復したヒョウエは(アカラギの助けもあり)、中級男娼として枕席を再開していた。肉体的な奉仕活動に恥じらうことなく、いつも元気にふるまうヒョウエの存在は、娼館の雰囲気を明るくしている。ひらひらと手をふり、「じゃあな、ハル。おつかれ!」といって脱衣場に向かうヒョウエは、このあと、ヒシクラの指づかいによって乱される。風呂場でのふたりの姿を想像してしまったハルチカは、キュウッと、肛囲の筋肉が萎縮した。
「おやすみなさい、ヒシクラさん。」
部屋にもどったハルチカは、湯帷子の裾をまくりあげ、手入れが必要な肛門部に、新しいペトロを塗った。
✓つづく
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