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〘46〙寡黙な男
しおりを挟むハルチカは猛々しく起立した陰茎に指を添えると、習得した千鳥で紳士をもてなす。尖端部分は完全に露出しているため、歯を当てないよう慎重に取り扱った。千鳥をされる側に不快感はないと思われたが、紳士は、愛撫の途中でハルチカの腕を摑むと、仰向けに押し倒した。
「あッ、……んッ!」
乳首責めを受けるあいだ、アカラギの曲取は、もっとずっとうまいなどと頭のなかで比較してしまうハルチカは、紳士の手つきではなく、好きな男の腕に抱かれるじぶんの淫らな肢体を想像して興奮した。紳士の年齢や職業は不詳だが、四十代半ばぐらいに見える顔をしており、白髪まじりだが、皮膚や足腰は衰えておらず、やや威圧的な感じを与える動きをしてくる。
「……ぁんッ、あんッ、ぁんんッ、」
利用客と戯れる男娼のあえぎ声は、淫靡な雰囲気を強調するかのように、べつの壺の間からも聴こえてくる。紳士とまぐわうハルチカの耳に、キリコやヒョウエが享楽に溺れる声は拾えない。肉体奉仕が当然のごとく職業として成立する世上につき、娼婦や男娼との性交は非日常などではなく、生活の一部と考えられていた。ゆえに、常連客が途絶えることはない。
「トキ……ツカサ……さまぁッ、」
射精の前に分泌される無色透明な液体(先走り汁)は、潤滑剤の役割をはたし、挿入時の摩擦を軽減する。事前にぺトロを塗ったハルチカの開口部は、すんなりと紳士の巨根を受けいれた。体内領域を巨大な蛇の頭身が突き進み、刺激に敏感な内壁を縦横無尽に這いまわる。何度も抜き挿しをくり返されるハルチカの呼吸は乱れ、躰じゅうが痺れるような錯覚に、ビクビクと指先や膝がふるえた。紳士の腰つきは暴力的なほど無遠慮に思えたが、ハルチカはいっさい抵抗せず絶頂を遂げた。
「あぁあぁぁーッ!」
熱いものが大量に腹底へ射出されると、ハルチカは苦悶の表情を浮かべた。大きさも長さもタカムラと等しいと思われる巨根だが、そり具合や勃起時の弾力などは異なるため、ハルチカは「くッ、」と眉を寄せてしまった。避けられない苦痛は、受け身の記憶と細胞に独特な余韻を刻む。布団のうえで呼吸を整えていると、無理やり四つん這いの体位を取らされ、凶暴化した野生動物のように腰を突かれた。血がにじむほどではないが、激しさを増す紳士の上下運動は、受け身の体力と気力を短時間のうちに消耗させてゆく。
「ハァハァッ、あぅッ、あぁッ! ……も……もう……、堪忍してぇ……ッ、」
膨張した下腹部が痛むハルチカは、ゼェゼェと息を切らし、障子戸のほうへ腕をのばした。アカラギの名前を叫びたくて切ない気持ちになるが、二度目の射精を遂げた紳士は、ズルッと腰を引き抜くと背後からハルチカの逸物に指を絡め、飽和状態から解放した。ドピュッと飛び散るハルチカの体液は、興奮を煽られた身体作用でしかなく、虚しい生理現象のように思えた。充分な快楽を堪能した紳士は、脱いだ衣服を着て椅子に深く身を沈めると、高級素材の手巾で額の汗を拭った。
トキツカサの紳士とは、二日目の夜もほとんど会話は発生せず、一方的な性交をしたあとは椅子に坐り、静かにまぶたを閉じていた。刻限まで浅い眠りにつき、着物を羽織ったハルチカに肩をゆり動かされて目を覚ます。壺の間を去るときも無口だった。なにを考えているのかまるでわからない人物だが、詮索をしても意味がないため、サイキチが布団を洗濯するため姿をあらわすと、ハルチカは風呂場で湯を浴び、部屋にもどって躰を休めた。
✓つづく
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