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〘24〙タツオミ
しおりを挟む誰ソ彼刻、書生ふぜいの若者がひとり、ふらふらと花町へやって来た。ここまで向かう途中、銀行に立ち寄って札束を引き出し、どこでも構わないといった顔つきで、娼館の看板を見あげる。
「きみ、手持ちはあるのか。」
くだけた調子で若者に声をかける男は、夜鷹坂の赤羅城である。花町での客引きは禁止だが、素人への情報提供は見過ごされた。アカラギの目に狂いはなく、若者は辰臣と名乗り、札束を差しだすなり、男娼のいる鋪を紹介してほしいと云う。
「これだけあれば、うちの上級男娼と枕席に侍ることも可能だが、きみは、学生ではないのか?」
「否、ぼくは二十二歳の一般人です。大學は、去年の秋に中退しました。」
「ならば、ついて来いよ。うまい料理と、小綺麗な男娼に逢わせてやろう。」
アカラギは先立って小径を歩き、タツオミを夜鷹坂へ案内した。帳場の菱蔵に引き継ぎ、タツオミ自身が台帳に必要事項を書き込む。アカラギは、娼館の三階へ移動した。壺の間で、固定客と戯れるキリコの笑い声が聞こえたが、とくに目も呉れず、控えの間で待機するハルチカに「仕度をしろ。初手だ。」と告げる。現在、上級男娼となったハルチカは、そう安くはない。初手とは、1回目の性交渉を指す隠語だが、かならず客を満足させよという、裏の意味合いのほうが強かった。何事も最初が肝心で、いかにして虜にするか、上級男娼に求められる水準は高く、ハルチカも承知していた。
「はいよ、哥さん。」
「今夜の客は若輩者だ。まずは、じっくり千鳥をしてやれ。悦ぶはずだ。」
アカラギの見立てはいつも正しい。云われたとおりにするハルチカは、小さくうなずいた。
「それで、体位はどうするの?」
ハルチカは鏡台のまえに坐り、うしろ髪を束ねながら聞き返した。アカラギは数秒ほど沈黙し、「鵯越がいいだろう。不器用な相手だろうと、すんなり挿れやすい。」と、あっさり云う。ハルチカは「諒解、」と応じた。
二階の客間で食事を堪能した若者は、迎えにきたアカラギと共に壺の間へ向かった。吹抜の階段をのぼると、すでに部屋で待っていた上級男娼と挨拶を交わす。
「お初にお目にかかります。ハルチカと申します。どうぞ、ハルとお呼びください。今宵は、存分に可愛がってくださいませ。」
膝のまえに両手をそろえ、深々とお辞儀をしたハルチカは、布団のうえに坐ったタツオミへ、ゆっくり躰をすり寄せた。
「こんばんは、ぼくはタツオミです。こちらこそ、よろしくお願いいたします。……ハルさんと、お呼びしても構いませんか?」
「はい、もちろんです。……失礼します。」
ハルチカは腕をのばし、タツオミの袴の結び目を解くと、まだ鎮まっている男根を取りだし、舌を這わせた。
「ハ、ハルさん……、」
アカラギの指示どおり、しばらく口をつかってタツオミの興奮を煽ると、着物を脱いで四つん這いになった。交接部を大胆に突きだされたタツオミは、ゴクッと唾を呑み、そっと指で触れた。
「信じられない……、こんなせまいところに挿れるなんて……、い、痛くないのですか?」
男娼に女性器のような受口はないため、肛門性交が基本である。勃起の硬さが足りなければ、性交中に持続できず衰えてしまったり、早漏の原因となる。タツオミの男根を千鳥で充分に硬直させたハルチカは、「ご心配なく。いつでもどうぞ、」といって笑みを浮かべた。
✓つづく
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