21 / 39
〘21〙盂蘭盆会
しおりを挟む先祖の魂を自宅に迎えて供養する期間を、お盆という。正式名称は盂蘭盆会といって、七月中旬から四日間に行われる仏教行事のひとつである。
夜鷹坂では、毎年職人に作らせた提灯を吊りさげ、先祖や個人の霊が迷わずにもどってこられるよう、仏間や坐敷、回廊、軒先などにいくつも飾った。盆提灯の絵柄に決まりはなく、菊や萩、桔梗といった秋の植物をあしらったデザインが一般的だが、楼主のタカムラは男女が暗がりでまぐわうようすを色彩豊かに描かせた。絵師いわく、ヒトの性交、交接、接合のようすには、悪縁を退散させる厄除けの効果も期待できるとのこと。実際のご利益より、タカムラなりの盛大な供養法らしい。また、盂蘭盆会の四日間は、壺の間は利用できず、客間で食事を楽しむ程度の交流となり、夜は男娼を伴って提灯街を散策することができた。
上級男娼となって間もないハルチカだが、幾人かの誘いを受けて夜の花町を散歩した。露店でりんご飴を買ってもらったり、鼈甲の櫛をプレゼントされたりもしたが、ハルチカの心が満たされることはなかった。男娼が外出できる機会は少ないため、せっかくならばアカラギと夜風にあたりたいと思った。
「ハルチカ、ただいまもどりました。」
馴染み客を見送り、ひとりで娼館へ帰ってきたハルチカは、帳場のヒシクラに名前を伝え、日付の欄に外出時間を記入してもらうと、貢物をすべて預けた。男娼は、客から贈物を受けとったさい、かならずヒシクラに報告し、物品の安全性などを確認してから手許に返される。
「りんご飴に、鼈甲の櫛か。おまえさん、見た目がちまっこいから、まるでお子さま扱いだな。」
男娼のなかでいちばん背が低いハルチカは、帳場のヒシクラに揶揄われ、「お黙り、」と、頬を膨らませた。拗ねた態度が余計に子どものように見えてしまうため、ヒシクラは調子に乗ってハルチカの手頸を摑んで引きあげた。帳場の台坐に押し倒し、文庫結びの帯を解き、直に陰部をさぐる。
「なッ? やめッ、」
「ちょいと遊ぶだけだ。……だが、そろそろ頃合かもしれん。」
「……そろそろ?」
「枕席に侍るのは、なにも外部の人間だけじゃない。おれらも、通常どおり金さえ払えば、男娼を好き勝手にできるんだよ。……やわらかいな。」
陰茎を揉むヒシクラの手つきが妙に気持ちよく感じてしまうハルチカは、こんなところを誰かに見られたらどうするのかと、内心ひやひやしつつ、置き型の盆提灯に目を留めた。男女がまぐわう絵柄は、楼主の趣味をうたがいかねない。淡い肌色をした女の牡丹は紅く塗られ、とくに際立って描かれている。乳房の先は、なぜか白く塗りつぶされていた。
「……や、やだッ、」
「本当は気持ちいいくせに、遠慮するな。あんときみたく、出してみろ。」
「……あぁッ!?」
ショワワーッと精液を放流してしまったハルチカは、カァッと赤面した。ヒシクラは帳場の抽斗から手ぬぐいを取りだし、「お疲れさん。」と軽口を叩く。もてあそばれたハルチカは、「あんたの手癖、サイテーなんだけど!」と悪態づく。口先で抗議したところで、身体作用はごまかせない。髭面のヒシクラは満足そうに笑みを浮かべ、浴衣の帯を結びなおしてやった。以前、大広間で鉢合わせたさい、ヒシクラの手でイカされた経緯をもつハルチカは、すっかり油断していた。
✓つづく
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる