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第342話
しおりを挟む側近とは、ひとえに貴人や権力者などに仕える立場であり、時には、女房役として身のまわりの世話もする。本来の責務は多岐に渡り、主人をそばで支える重要な役割を持っていた。
ある日の昼下がり、恭介は定位置に座布団を敷いてマグナの講義を受けていたが、下半身がそわそわして落ちつかない時間を過ごした。というのも、本日の授業は“人体の仕組みと生殖行為の基本”についてだった。マグナは、医学生の研修で使いそうな肌色の模型を教卓に横たおらせると、股のあいだの器官を丁寧に説明する。
「よいか、諸君。キミたちの中にはすでに経験者もおるだろうが、いずれおぬしらが仕えることになる主人が女性である場合、生半可な知識で失礼があってはならん。むろん、男性もしかり。身体的発達の違いをしっかり覚えておくこと。」
マグナは、まず、女性器について構造を説明していく。思春期に始まる突発的な月経や、生殖行為によって誕生する生命の尊さなど、なかなか奥が深い。続いて、男性器の模型に乗せ変えると、男同士の性交を王族では禁止されておらず、開口部に挿入する際の注意事項を述べる。
(……なんだか、すごい授業だな。……今さらって気もするが、この歳になって性交渉の手順をイチから教わることになるとは、夢にも思わなかったぜ……)
ジルヴァンと性行為に及ぶ関係である情人の立場は、ふたりだけの秘め事と考えていた恭介だが、側近ともなれば、主人から性的な事柄を要求される場面が発生するようで、なにやら複雑な思いがした。
(……ランカも、そのうち誰かを世話するようになるわけで、それは、本人にとって名誉なことなんだろうけど。側近ってのは情人みたく、代替が可能な役職だから、主人に感情移入して惚れ込んだら別れがツラくなるよな……)
ランカは相変わらず最前列に座り、熱心にマグナの言葉に耳を傾けている。離れた位置に座る恭介は、その表情を確認することはできない。今、講義に参加している学生が皆、恭介と同じ境遇に就くとはかぎらなかったが、一途な思いを貫きそうなランカの身の上が気になった。
(うん? そういえば、誰がどの人物の側近になるのか、どうやって決めるンだ?)
今更とはいえ、ふと、当然の疑問が浮かんだ。
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