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第337話〈クルセイド法国〉
しおりを挟む政務を執行する最高指導者を、法皇と呼ぶ。クルセイド国家は、厳粛たる教皇により統治され、法皇が代理で法令を制定し、条例を議決する。リゼルとウルをコスモポリテスに残して旅をするゼニスとシリルは、クルセイドに入国すると、無償で寝泊まりができる教団施設の一室で生活を送っていた。
室内に寝台はひとつしかないため、ゼニスとシリルは抱き合って眠ることが多かった。今朝早く、先に起床したゼニスは朝勃ちの処理を手淫で済ませようとしたが、裸身のシリルが胴体にまたがってきた。
「おはよう、ゼニスぅ。……おちんちん勃っちゃったの? だったらそれ、ぼくにちょうだい~。」
「おい、シリル。朝から冗談はよせ。」
「冗談じゃないよぅ。ほら、入れていいよ~。」
「寝惚けてるのか?」
「えへへ~、ゼニスはきょうもかっこいいな~。」
うとうとしながらも、あお向けになるシリルは、パカッと、両膝をひらいて見せた。ゼニスは上体を起こして紺色の髪を指で掻きあげると、思わず笑みがこぼれた。クルセイド法国に身を置くようになってから、ほぼ毎日のようにシリルから求められるゼニスは、精根が尽き果てるまで期待に応えている。
「……シリル、本当にいいんだな。」
「うん、いいよ。きてぇ。」
「わかった。」
昨夜も(それなりに激しい)性交渉を遂げたばかりだが、今朝もまた、ゼニスはシリルが満足するまで戯れた。性交のあと、びしょ濡れになったシーツを洗うため、着替えたゼニスが共用の水場へ向かう。薄ものの麻布を着て窓際に立つシリルは、日光浴をしながらつぶやいた。
「はわ~っ、太陽がキラキラしてる。あったかくて気持ちいいな~。……今頃、あのふたりも仲良くしてるかなぁ。……ぼくとゼニスみたいにさ。えへへ。」
心身共に幸福感に充たされているシリルは、我が子の幸運を願いつつ、ゼニスとの性活を満喫していた。クルセイドに到着後、すでに何十回も性交していたが、シリルは痛みを感じることが少なくなっていた。
「ゼニスったら、やっぱりすごいや。ぼくを、こんなに悦ばせるなんて、ゼニスじゃなきゃ、誰にも無理なんだ。……大好き。」
背後で扉の開く音がして振り向いたシリルは、ハッと、コーラルレッドの双瞳を見ひいらいた。白装束の男が勝手に侵入してくると、ガバッと、シリルの肩を掴んだ。
「わっ!? 何をするんだ!」
「は、はははっ、おまえ、いい匂いがするな! 本当は女だろ!?」
「ちがう! ぼくは男だ!!」
「嘘をつくな! 一緒にきた背の高い男と毎晩ヤってるくせに!」
「ゼニスのこと? それなら当然でしょ、ぼくたちは……って、わぁっ!?」
寝台へ押し倒されたシリルは、無意識に獣人の血が騒ぎ、ザワッと、手脚の爪が鋭く変化した。無理やり膝をひらかせようとする侵入者に向かって、バリッと、爪を立てる。
「今すぐ出ていけ変態!!」
「威勢のいい雌だな。ますます犯したくなった。」
男は頬から流れる血を指ではらうと、にやり、と笑う。ゼニスが不在につき、シリルは自分の身を守ることが先決だった。
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