恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第327話

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 完全に足の感覚が戻ったわけではなく、痺れが残る状態で立ちあがった恭介は、前のめりにフラついた。咄嗟とっさにランカが腕を差しのべたが、恭介の体重を支えきれず、一緒に床板へドターンッと倒れ込む。

イテテて!」
「イシカワ様、ご無事ですか!?」
「ああ……、キミこそ大丈夫か?」

 ランカに転倒の衝撃を与えないよう、瞬時に反転してみずか下敷したじきになった恭介だが、背中の痛みに顔をしかめた。おおかぶさっているランカのからだは、恭介が全身で受けとめたが、細身の青年につき、苦痛に捉えるほど圧迫感はない。ただし、偶然とはいえ、互いの下半身が密着しているため、ランカのほうで先にうろたえた。そこへ、昼飯を済ませて通りかかったシュイと、顔を合わせた。

「なにやってんの、あんたら、、、、。仮にも側近候補のくせに、昼間ひるまっからさかってんのかよ。」

莫迦ばかっ、ちがうっての!」

 完璧に誤解されたが、シュイの状況判断は、にわかに間違いとは云い切れない。その証拠に、恭介の右手はランカの尻を服の上からつかんでいた。(やべ!)と、あわてて両腕をあげたが、シュイの目は冷ややかだ。

「じゃま者は消えるから、続きを楽しみなよ。じゃあな、キョースケ、、、、、。」

(だから、ちがうっての!!)

 シュイは、ひらひらと片手を振り、廊下を去ってゆく。上体を起こしたランカは、気まずそうに沈黙している。シュイに対して、反論すべきはランカのほうではないかと思いつつ、恭介は文官布ぶんかんふしわを指ではらった。体面を汚されたランカに、恭介は「悪かったな」と、ひとこと謝罪した。

「……ぼくのほうこそ、すみません。どこもお怪我はありませんでしたか?」
「背中を打ったけど、大丈夫だ。」
「そうですか……。あ、あの、昼食はおひとりで行かれてください。ぼくは、いったんへやに戻ります。」
「ああ、わかった。またあとでな。」
「はい、失礼します。」

 小走りで去ってゆくランカは、あきらかに動揺していた。恭介は片方の手のひらを見つめ、やわらかい臀部でんぶの感触を思いだし、「マズかったか?」と、つぶやいた。

    * * * * * *
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