恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
321 / 364

第320話

しおりを挟む

 ランカは、スラッとした細身で、濃い黄色の髪と眼をもつ青年だった。どことなく気品を感じるため、恭介のほうが田舎いなかくさい風貌に見える。ただし、恭介自身は無自覚だが、均整の取れた体格や面構ツラがまえは上等の部類だった。

(ランカって、もしかして王都育ちってやつか? シュイとちがって、姿勢からして上品だよな……)

 シュイは、地方からやって来た若者で、とくに身分が高いわけではない。だが、ランカの家柄いえがらは代々高官こうかんを輩出してきた実績のある名家だった。とはいえ、育ちの差異で人種を区別するほど、恭介は計算高くない。気さくに握手を交わし、世間話をして別れた。3番館に戻ると、シュイが床に転がっていた。なかなか緊張感のない若者である。ある意味、きもわっている。

「おい、シュイ。もう少しはじによけてくれよ。」

 ただでさえ狭い床面積につき、大の字で寝られては、恭介がくつろげない。しかも、脱いだ履物が散らばっている。恭介は年長者として注意すべきか悩んだが、黙ってシュイの皮靴くつを板の上に揃えておいた。

(……せっかく側近候補同士だし、ランカと同室でも良かったかもな)

 つい、内心で本音をつぶやくと、何かを感じ取ったシュイが、ガバッと起きた。恭介は(やべっ、さとられたか!?)と、一瞬、反省したが、シュイは壁際に移動すると、膝をかかえて座り込む。

(……うん? なんだ、その態度は……)

 あきらかに、おびえている。よく見ると、肩が小さくふるえていた。間もなく、扉の前で女性の声がした。

「3番館のイシカワ様、シュイ様、文官布ぶんかんふの仮縫いをお持ちしましたので、試着をお願いします。」

 カタカタ慄えるシュイを横目に、恭介が扉を開けて応対する。

「試着は夕方からじゃなかったのか?」
「前回より合格者の人数が増えましたので、急遽、早めの試着をお願いしております。ご協力くださいませ。」
「了解。これを着てみればいいンだな?」
「はい、こちらはもう人方ひとかた分です。」
「オーケー、すぐ試すよ。」
「おーけい?」

 針仕事を担当する女官は目を丸くしたが、恭介が、くすッと笑みを浮かべると、ポッと頬を赤く染めた。女官はそのまま扉の前で待機した。

    * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...