恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
320 / 364

第319話〈シュイとランカ〉

しおりを挟む

「うお……、思ってたよりせまいな……。」

 恭介が身をおくことになった御室堂おむろどうの3番館は、ふたり分の布団を敷いたら残りの床面積はほとんどないと云っても過言ではなかった。小さな方卓テーブルと燭台、私物を収納するふた付きのかごがある。円形の窓は西側にひとつあり、脱いだ革靴くつを置くと思われる1枚の板が扉の横に設置されていた。

(これでふたり部屋って、マジかよ。ザイールの部屋が広かっただけに、窮屈きゅうくつに感じるぜ……)

 荷物を床に置いて胡座あぐらをかくと、あとから同室の番号を引き当てた〈シュイ〉が、バターンッと、勢いよく扉を開けて入ってきた。先に室内にいた恭介を見るなり、ギロッと、にらみつけてくる。淡紫あわむらさきの髪と眼をした、20歳の若者である。立ちあがる恭介をしゃに見あげ、「まさかあんた、、、と同じへやになるとはな」と、にくまれ口をきく。

「オレのことを知っているのか?」

 恭介的には初対面につき、首をかしげて聞き返した。若者は「イシカワキョースケだろ。じぶんは、シュイ=リッカ=セージだ」と名乗り、壁際にドカッと腰をおろした。

「シュイくん、履物はきものは脱がないと室内へやが汚れるだろ。そこの板にそろえて置けるようになってるぞ。」

 恭介が扉の横を指で示すと、シュイは、わざとらしくため息を吐いた。

「なんだよ、“シュイくん”って。気持ちわりィな。シュイって呼べよ。じぶんもあんたのことは、キョースケ、、、、、って呼ぶからさ。」

「そうか、わかった。これからよろしくな、シュイ。」

「……よろしく。」
 
 なにやら言動が図々しい歳下とししたの男だが、ジルヴァンとおなどし(あとから知る)につき、独特の意思の強さと自信を感じた恭介は、軽く肩をすぼめた。今後1年間は同室者ルームメイトとして寝食しんしょくを共にする以上、初日から衝突トラブルは避けたい。履物を脱ごうとしないシュイを、放っておくことにした。文官布ぶんかんふのサイズ合わせまで時間があるため、恭介は、いったん退室した。息の詰まる個室を抜け出した候補生たちが、建物のあちこちをふらついている。その中に、見知った顔を発見した恭介は、自分のほうから近づいて声をかけた。

「よう、元気にしてたか?」

 ポンッと、背後から肩に手のひらを置かれた〈ランカ〉は、ビクッと躰を硬張こわばらせて振り向いた。

「あなたは……確か……、」
「イシカワキョースケだ。合格発表の日、いちど会ったよな。」〔第305話参照〕
「ええ、そうでしたね。……ぼくは、ランカ=ミューン=ロゼッタと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。」
「ああ、よろしくな。」

 ランカは、恭介と同じ側近候補のひとりである。

    * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...