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第304話〈快楽不足と超過〉
しおりを挟む明日は、文官試験の合否が貼り出される。場所はコスモポリテス城の門前脇で、特別に掲示板が設置された。しかし、結果発表の時刻は告知されておらず、徹夜でその瞬間を待つ受験者もいるくらいだった。
仕事休みに当たらなかった恭介は、いつもどおり出勤すると、執務室で大量の伝票を処理しつつ、今か今かと、小さな鉄格子付きの窓から外のようすを気にかけた(とはいっても東棟の4階から城門は見えない)。ユスラは公休だが、アミィの姿は朝から見られなかった。とはいえ、サボりではなく、第6王子の側仕えとして、他の用事に駆り出されている。これもよくある日常につき、恭介は合否ばかり気になった。
「キョースケ様、そんなに城外ばっか見て、何かあるんスか?」
「うん? いや、何かと云うか……。ほら、きょうは文官試験の結果発表がある日だろ。」
「え? そうなんスか? あ! ユスラっちが受けたとか云ってたやつっすね!」
「そうそう、それ。」
レッドは内政に興味はなく、出世話は自分には関係ないと公言する。その点においては、事務内官として現職をやり遂げる責任感に期待できるため、恭介はレッドを信用していた。伝票整理をする手つきも、様になってきている。なにより、執務室にいれば必ずアミィと接点を持てるという、利点があった。
(まだ、失恋したと決まったわけじゃないし、がんばれよレッド。……アミィに、おまえの男らしさを見せてやれ!)
内心、レッドの恋路に声援を送っていると、ゴォーンゴォーンッ、シャーンッと、楽器を打つ音がした。城全体に響き渡るそれは、文官試験の合否が貼り出された報せである。すぐにピンときた恭介は、伝票の束を長机に手放した。
「悪い、レッド! ちょっと行ってくる!」
「へっ? キョースケ様!? お、お気をつけて!」
レッドは、慌ただしく室を出ていく恭介の背中を見て、首を傾げた。なぜ、急ぐ必要があるのか不明だったが、ひとり残されたレッドは黙々と作業を続けた。
(ついにこの日が来たぜ! やっと結果がわかるんだ……!!)
恭介は逸る気持ちを抑えながら、石造の廊下を速歩で通り抜けた。
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