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第295話〈スタート地点へ〉
しおりを挟む午前と午後で、試験内容が変わる文官試験において、どちらの時刻を選択するかは運試しに近い。不得手な出題に当たれば、まったく解答できない者もいた。面接官によっても嫌らしい質問を投げかけてきたりするため、恭介は慎重に言葉を選ぶ必要があった。“誰かの役に立ちたい”という受験動機では、曖昧さが残るらしい。とはいえ、これ以上の考えは自分の中にない。足許へ視線を落としていた恭介は、スッと前を向き、はっきり意思を述べた。
「オレは諸民族の存在意義を尊重します。王室であろうと獣人であろうと、身分が低い人間であっても、生来の特徴は個性です。すべての人々がこの国の法をもって豊かな日常を送れるよう、より多くの事柄を学びたいと思っています。」
「……誰が為とは、第三者のことでしたか。種族と身分は世上において必然的な理でもありますが、あなたの持論からは公共心が感じられますね。文官を目ざすべき人材であることを認めます。……5列目の3番席へ移動して、筆記試験にお進みください。」
(お、おお! 書類審査は通過したぞ! やっぱり、人相でふるいにかける適性検査みたいなもンだったのか? 緊張したぜ……!)
自分用の控えに“認証済”の判が押された用紙を受け取った恭介は、「ありがとうございました」と云って、指示された場所に着席した。間を置かず、担当者がやって来て木函から籖を引く。
「イシカワキョースケ様には、これから75番の試験を受けていただきます。30問のうち、20問正解で合格となりますが、成績順で官位が決定しますので、全問正解を期待しております。所要時間は1時間です。筆記用具はこちらが用意したものをお使いください。また、手荷物は椅子の下に置き、試験中に触れることがなきよう、お願いします。監視官に疑わしい動きと判断されますと、試験の途中でも失格扱いとなりますので、ご注意ください。……それでは開始します。」
お待ちかねの問題用紙が、目の前へ差し出される。続いて、長机に硯と筆がコトンッと置かれた。
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