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第289話〈とっておきの朝〉
しおりを挟むいよいよ明後日は、コスモポリテス城の北棟で文官試験が実施される。恭介は事前に年次休暇を取得していたが、ユスラは午後の部で試験を受けるらしく、午前中は執務室でいつもどおり仕事をするという余裕ぶりだった。ちなみに、年次休暇とは一定期間勤続した労働者に付与する休暇のことで、当日の給料も保障された。いわゆる〈有給〉と同じ意味で使われる用語である。
「アミィさん、ユスラくん、レッド。お疲れさまでした。」
「あら? キョウくんが定時に帰るなんてめずらしい事もあるのね~。」
「アミィさん、キョースケさんは毎日がんばりすぎですから、きちんと心身の疲労を回復する時間が必要だと思いませんか?」
「自分もユスラっち先輩と同じ意見であります!」
「まぁ、ふたりったら。うふふ、それもそうねぇ。キョウくんお疲れさま~。」
恭介は作業台を片付けると、「お先に失礼します」と云って、いちばん乗りで退勤した。というのも、昼休憩の時にジルヴァン付きの女官がやって来て、共寝の呼び出しを受けている。長らくご無沙汰していた恭介は、もう情人としての役割を求められていないのではと、内心かなり不安を感じていた。
(……試験前に呼んでもらえて良かったぜ。……ようやくキミに、オレの正体についても話せそうだしな。とにかく、まずは風呂だ、風呂!)
着替えを取りに、いったん帰宅した恭介は、ムダ毛処理をすべきか頭を悩ませた。小刀を持ち歩いたせいで、右腕に深い傷を負っている。ジルヴァンが忌わしい傷痕を目にするのは、今夜が初となる。
(……こんなことでキミを悲しませるなンて、本末転倒だな。……不衛生な気もするが、しっかり洗っとけば問題ねーか?)
そこまで体毛が濃いわけではないが、恭介は小さくため息を吐いた。ジルヴァンとの性交は最高に気持ちがいい。カラダの相性だけでなく、互いの精神が融合する感覚に捉われる瞬間があり、それは極上の快楽へ誘う合図でもあった。
「……ジルヴァン、今夜は絶対キミの寝間まで行くからな。……たとえ這ってでも必ず行くぞ。」
もう二度と同じ失態はくり返さない。恭介は密かにそう誓った。
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