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第284話
しおりを挟む神殿で平民の仮登録を申請した恭介は、約1時間ほどで書類が発行してもらえた。和紙のような手触りで、B5判ほどの大きさである。折り目をつけてはもったいないと思った恭介は、そのまま肩がけのサックの中へしまった。ついでに文官試験の申し込みを済ませるため、城内の北棟へ向かった。
北棟には、アミィのような高官が身を置く室が多い。一張羅の恭介が受付窓口を探してキョロキョロしながら廊下を歩いていると、意外な人物と鉢合わせた。
「おや。そなたはジルの……、」
(うん? ……っ!? も、もしかして王様か!?)
まさかの国王と曲がり角で顔を合わせた恭介は、どのように挨拶してよいのかわからず仰天した。以前は衝立越しで会話をしたが、あきらかに豪勢な衣装と数十人の高官を引き連れて歩く姿には、凄まじい威厳があった。〔第25話参照〕
「ふむ。やはりそなたか。その黒毛は見間違わんな。はっはっは。ふんふん、きょうは私用かな。まずは息災で何よりだ。そなたの活躍ぶりは嫡出子の第6王子から聞いておる。今後も期待しているぞ。せいぜい励んでくれ。」
「は、はいっ。精進します!」
恭介はピシッと背筋を伸ばして返事をした後、腰からガバッと前傾姿勢をとった。ジルヴァンと同じく赤みがかった茶色い髪の頭に、自らの権威を示す王冠をかぶっている。顔つきは50代くらいに見えたが、国王の髭も薄かった。しかし、太い眉毛とギョロッとした茶色い双瞳は、むやみな威圧感を与えた。恭介は、いつまでも下げた頭をあげられずにいたが、国王は「ではな」と云って、高官をゾロゾロと従えて去ってゆく。
(……今のが、コスモポリテスの王様、……ジルヴァンの親父……なんだよな……?)
直に国王と対面した恭介は、息が詰まるような思いだった。この国の王子と恋愛関係に発展し、寝台を共有している事実に強い責任を感じた。
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