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第283話〈たどり着いた光〉
しおりを挟む日本語としてはきわめて新しい文字も、コスモポリテスでは用例として普通に唱えられている。恭介は文官試験を受けるため、勉強を始めて気づいた点がたくさんあった。コスモポリテスに限らず、異世界の根底に現代人の影が見え隠れする今日、恭介は、神殿を訊ねた。試験当日に必要な身分証明書を発行してもらうためである。
「平民証書の仮登録をご希望ですか? ……それでは、現在の身分を調べさせていただきますので少々お待ちください。」
ザイールであれば話が早かったような気もするが、あいにく対応してくれた神官は別人だった。私服として今でも大事に着ている一張羅の恭介は、礼拝堂のベンチに腰をかけると深呼吸をした。しんっ、と静まり返った神殿の内部は、なんとなく緊張する。
(やっぱりなつかしいな……。確か、この辺りでシリルくんは丸くなってたっけ……)〔第10話参照〕
ベンチの木目に手のひらを添えて瞼をとじれば、シリルとゼニスの姿が頭の中に浮かんでくる。感謝してもしきれない人たちの顔を思いだしていると、待つ時間は長く感じなかった。さきほどの神官が戻り、恭介を応接室へと案内する。
「イシカワキョースケさまでしたね。身分の確認をさせていただきましたところ、私奴のようですが、わが神殿に奉仕するザイールさまが身元保証人なのですね。また、勲章の授与歴と事務内官としての経歴も追記されています。書類をお読みしただけでも、きちんとした御方なのだと想像できます。……これからもコスモポリテスの国民として、道に迷わず精進なさいませ。神は、あなたの未来を光で照らしてくれるでしょう。」
(……いつの間にか、オレの個人情報が記録されてるンだな。下手なことをすれば、お見通しなのか? うん? さすがに情人とまでは書き込まれてねぇな……)
保管書類の内容にまちがいがないか確認するよう云われた恭介は、じっ、と眺めた。事務内官としてすでに半年以上務めている恭介は、平民の仮登録ができた。昨夜、ザイールにそれとなく訊ねたところ、せっかくなので手続きすべきだと進言された。
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