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第279話
しおりを挟む両耳に黒い涙石のイヤリング、胸もとに勲章バッヂ、右手頸にクォーツの腕時計、左手の人差し指に黒翡翠の輪具を飾りつける恭介は、いよいよ、むやみな高級感に気が引けた。
(すげぇな、オレ。この調子は少し不安だぜ……)
目立つ装飾品はなるべく避けたい身分(まだ私奴)だが、本人の意思とは関係なく、恰好の派手さが増してゆく。どれもこれも他者からの厚意につき、感謝して受け取るべき代物でもあった。改めて、第三者の気持ちをありがたく捉えた恭介は、その場で深々と頭をさげた。アミィによって連れてこられたジルヴァンは、用事があると云って早々に退出してしまう。
(……ジルヴァンの顔を見れたのは、ひと月ぶりじゃんかよ。せっかく会えたのに、もう行っちまうなんてな……。キミに話がしたかったけど、どうせ執務室じゃ無理か……)
アミィとユスラは、それぞれ持ち合った食べ物を長机に並べ、レッドは洋杯を用意している。アミィとユスラは、レッドにジルヴァンの正体を明かしてないようで、3人とも気楽な表情をしていた。
(今のがコスモポリテスの第6王子で、オレはその情人で、実は恋仲って云ったら、今度はレッドが腰を抜かすかもな!)
しかし、一般国民であるレッドには秘密にしておいたほうが無難な事柄につき、ユスラへ目配せした。空中でパチッと目が合ったユスラは、恭介が左指を立てて見せると無言で頷いた。立場を同じくする者同士、意思疎通が可能で助かった。やや心配なのは、口が軽い上司の存在である。試しに視線を送っても、長机の食べ物に意識を集中させているため、顔をあげる気配すらない。
(アミィは色気より食欲だな。……これから酒を呑むわけじゃないし、うっかり暴露する展開じゃないよな。……たぶん)
恭介はアミィの言動に気をつける必要があると判断し、その隣に腰かけた。早速、ショートケーキそっくりの焼き菓子をおいしくいただく。甘さひかえめで美味である。生クリームや、いちごを食べたのは、コスモポリテスに来て初めてだった。
* * * * * *
※お詫び※
なかなか更新の時間帯が定まらず不規則で申し訳ございません。
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