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第277話〈祝賀パーティー〉
しおりを挟む内官布の着用は、ちょっとしたコツがいる。留め具が内側にふたつ並び、腰紐は二重折りにする。一年中長袖だが、とくに暑かったり寒いわけではない。灰色のズボンを穿いたあと、バサッと布地をひろげ、サッと腕を通すと、パチンパチンと釦を留め、シュルッと帯を結ぶ。最後に胸もとに功労賞の勲章バッヂを付けて完了だ。
「……ザイール、そんなにじっくり眺めないでくれよ。」
早朝、恭介の身仕度を寝室の引き戸から覗きみる人物がいた。視線を感じて声をかけると、ザイールは正直に顔をだした。
「す、すみません。なんだかつい……。キョースケさまの着方は、様になりますね。あ、おはようございます。」
「おはようさん。この恰好、そんなに様になるか?」
「はい、とてもよくお似合いだと思います。」
「そうか? サンキュー。」
あまり自分ではそう感じないため、恭介は少し首を傾げたが、体裁を褒められた以上、礼を述べておく。直に内官布とはお別れし、文官の衣服が貸与される予定だが、その点は結果次第で変わるため、まだ伏せておいた。先に調理室へ向かい朝飯を食べると、手洗い場で歯を磨き、頭髪と髭を整える。
(最近、髭が薄くなったのは気のせいか?)
櫛で黒髪を梳きながら、ふと、鏡に映る顎に視線を落とした。思えば、コスモポリテスに来てから髪は伸びるいっぽうだが、性毛が薄くなった自覚がある。ちなみに、第6王子の陰毛は最初から薄い。ジルヴァンの脇や脛に至っては、1ミリも生えていなかった。コスモポリテスの住人はムダ毛が少ない体質だが、恭介の細胞も、そのように変化しつつあるのかもしれない。毎日のように異世界の空気を吸っているため、いつの間にか、体質にも影響していた。ジルヴァンの細い腰や下半身の肌色を思い浮かべた恭介は、男性器が熱くなってきた。
(やべ。変態かよ……)
慌てて気分を落ちつかせ、城へ出勤する。
いつもどおりの日常がひどく平和に感じる恭介は、執務室の扉をひらいた時、心臓が飛びだすほど驚いて、腰を抜かしそうになった。
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