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第272話
しおりを挟む恭介が出勤すると、鍵当番であるユスラが室内で作業の準備を始めていた。
「キョースケさん、おはようございます!」
「おはようさん。また迷惑かけたな。」
「そんな、迷惑だなんてっ。キョースケさんがご無事でなによりです!」
「サンキュー。」
以前、ボルグを慕う人物から闇討ちを喰らった恭介は、苦笑いした。当時の事情を知らないレッドは一瞬目を丸くしたが、きちんとユスラに挨拶をする。
「は、初めましてっス。自分はスガードといいます! きょうからお世話になります!!」
「スガードさんですね。ぼくはユスラと申します。アミィさんからお話は聞いています。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「はい! あの、自分のことは“レッド”って呼んでくださいっす。あと、あなたのことは“ユスラっちさん”と呼んでもいいですか?」
「ユ、ユスラっち!?」と、本人が吃驚するため、恭介が訂正した。
「レッド。そう呼びたきゃ、敬称は不要だろ。無駄に堅苦しいぞ。」
「わかりましたっす! じゃあ、ユスラっちで!!」
「は、はい、ご自由にどうぞ……。えっと、レッド……さん……?」
ユスラが控えめな態度で容認すると、再び恭介が口を挟んだ。
「ユスラも、そこはくんでいいだろうよ。ふたりとも歳が近いだろうし仲良くな。」
恭介がその場をまとめると、ユスラとレッドは「「はいっ」」と返事をした。ふたりの笑顔を見た瞬間、少しずつ未来は明るい方向へ動き出している。そう信じることができた。上司のアミィは、相変わらず遅い。しかたなく、先に仕事へ取りかかることにした恭介は、伝票整理の手順から説明した。レッドは真剣に耳を傾ける。
(……ありがてぇな。こうやって誰かが仕事を覚えてくれるのは、本当に助かるぜ。……ユスラも文官になれば、事務を兼任できるとは限らないしな。……レッドには、ひとりでも困らないよう、しっかり教育しておこう)
なるべく丁寧に指導していると、ようやくアミィが姿を見せた。
「みんなぁ、遅れちゃってごめんなさ~い!」
執務室の両扉をバンッと開放し、ドタドタ足音を立てながらレッドの存在に目を留めたアミィは、「あっ、そうだったわね~」と云って、胸もとに垂れた三つ編みを指でピンッと後ろへ戻した。
「コホン! その子がスガードくんね? あたしはアミーユ=パラッシュ=フェニーハートよ。よろしくね!」
即座に挨拶を返すと思われたレッドは、なぜか茫然とした。
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