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第271話〈よろこびと進化〉
しおりを挟む恭介がレッドを事務内官に勧誘したところ、問題行動を続けた内官を厳重に処罰し、被害者の救済処置として、移動願いが受理された。これで、不良共から自由の身となり、晴れて執務室勤務が決まったレッドの顔色は冴えわたり、本来の明るい性格が長所となった。
「おはようございます! キョースケ様!! きょうからよろしくお願いします、先輩!!」
「うん? レッドじゃないか。いつからそこで待ってたンだ。」
1週間以上も仕事を休んでしまった恭介だが、けがの理由が考慮され、一部有給扱いとされた。まだ右腕も左足の小指も完治していなかったものの、10日ぶりに出勤すると、城の前でレッドが待っていた。
「1時間前からっす!」
「1時間!? なんつー、もったいねぇことしてんだよ。朝の時間は貴重だろ。」
「全然もったいなくないっす! キョースケ様を待つあいだ、ずっとわくわくしてましたから!」
「そうなのか?」
「はい! だって、いよいよ新しい仕事を始められるし、なんといっても正義の味方が先輩だし、自分、一生懸命がんばって、キョースケ様に必ず恩返しするっス!!」
「正義の味方? オレが? あ……朝から元気だな……。ほどほどに期待してるよ。」
レッドの中で、ますます恭介に対する好感度はアップしていたが、これといって不快な印象は受けない。なぜなら、レッドの性癖は至ってノーマルで、女体への関心が強い。自宅にはエロ本が堆く積み重ねてあった。つまり、恭介が親身に接しても下手に意識される懸念はなく、男同士の会話が可能だった。
(……ユスラもアミィも、見た目も性格もどこか中性的だから、レッドの男気感は、なんとなく安心するぜ。……かえって、結果オーライじゃねぇの?)
事件発生後、まだジルヴァンと対面する機会を得られない恭介だが、ひとまず、レッドの不安要素を取り除くことができた。それだけでも、かなりの前進である。事件直後は強烈な自己嫌悪に苛まれたが、最善たる環境の変化を実感すると、だいぶ気楽になった。日本で暮らしていた時の恭介は、組織に属さなくて済むように独立し、会計事務所を構えたが、コスモポリテス王国に飛ばされてからというもの、すっかり計画は乱されていた。
「さあ、どうぞ。きょうからここがキミの職場だ。」
執務室の前に到着した恭介は、レッドの顔を見つめてから扉を開けた。
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