267 / 364
第266話
しおりを挟む大量出血の後、起きあがって喋りすぎた恭介は、頭がクラクラした。少しの吐き気を催す目眩に襲われ、再び寝台へ横になると、カイルが枕もとまで歩み寄った。
「同じ大きさの内官布を調達してきましたので、血で汚れたほうは焼却処分します。お代は結構ですから、帰るときには、こちらを着てください。」
「ど、どうもありがとう……。」
「それから、これも。」
カイルは胸の衣嚢から布巾で包まれたものを手渡した。恭介が手のなかで解すと、勲章バッヂが出てきた。
「あなたが取り返してくれたのか?」
「はい。……どうか大事になさってください。キョースケ様の身は、わが主君たる王子様の所有物でもあります。それをお忘れなく。」
(……ああ、わかってる。……それは十分わかってるつもりだったけど、いつか、こんな事件が起こるンじゃないかと、思ってたフシがあるんだよな。……オレ的に、自分の性格に欠点があるとわかっているからさ。……ごめんなジルヴァン。寝間まで行けなくて。きっと、オレが来るのを待ってたはずだ……)
聞けば、共寝の時刻が待ちきれなかったジルヴァンの命令により、恭介を迎えに行ったカイルは、不良に殴られて倒れる姿を発見して駆けつけた。つまり、悪どい役人を成敗し、勲章を奪還し、レッドを助け、負傷した恭介を医官の元まで運んでくれたのは、カイルだった。
(……この結果は、さすがに参るぜ。……オレひとりじゃ、レッドすら庇えなかったのか。しかも、ジルヴァンの気随に救われたな。カイルを寄越さなければ、今頃、オレはもっと深傷を負っていたかもしれないぜ)
恭介は力不足を反省したが、6人を相手に健闘したほうである。実のところ、右腕の傷はレッドを守ろうとして切られたものだ。さいわい、恭介は左利きにつき、事務内官の仕事に支障はないと思われた。ただ、日常生活が少し不自由になる点は否めず、眉をひそめた。
(ちくしょう……。どうしてうまくいかねーんだ。ひとりじゃなにも出来ない子供みたいじゃねぇか……)
どんな時も、まわりに助けられている。それは素直に感謝すべき事柄であり、恭介は人間関係に恵まれていたが、時折、孤独を感じた。それは自分の正体が日本人であることが原因だった。誰にも打ち明けられない日々が続いていたが、文官試験に合格後、ジルヴァンに白状するつもりである。
(もう限界なんだ。本当はキミに、すべてを話して楽になりたい……)
恭介は、布団の中で身振るいした。
* * * * * *
1
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
先生を誰が先に孕ませるかゲーム
及川雨音
BL
複数ショタ×おっぱい有りマッチョ両性具有先生総受け
おっぱいとおしりがデカいむちむちエロボディー!
強姦凌辱調教洗脳脅迫誘導だけど愛があるから大丈夫!
ヤンデレ気味なショタたちに毎日日替わりで犯されます!
【書いていくうちに注意事項変わりますので、確認してからお読みいただくよう、お願い致します】
*先生の肉体は淫乱なのですぐ従順になります。
*淫語強要されます。
*複数プレイ多め、基本は一対一です。ギャラリーがいるのはプレイの一環です。ある意味チームプレイです。
*詳しい女性器・生理描写が有ります。
*ゴミを漁る、トイレ盗撮、ハッキングなど犯罪とストーカー行為をナチュラルにしています。
*相手により小スカ、飲尿、おもらし、強制放尿有ります。
*相手により赤ちゃんプレイ、授乳プレイ有ります。
*パイズリ有り。
*オモチャ、拘束器具、クスコ、尿道カテーテル、緊縛、口枷、吸引機、貞操帯もどき使います。
*相手によりフィストファック有ります。
*集団ぶっかけ有り。
*ごく一般的な行動でも攻めにとってはNTRだと感じるシーン有ります。
*二穴責め有り
*金玉舐め有り
*潮吹き有り
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる