恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
266 / 364

第265話〈その男、カイル〉

しおりを挟む

 こぶしを振りかざした瞬間、次に恭介が意識を回復した場所は、見知らぬ天井の部屋だった。

「……あ……れ? ここは……?」

 ぼんやりとしたまぶたこすろうと右腕を動かすと、ズキズキッと激しい痛みを感じた。「うぐっ!!」と短く叫ぶと、扉がガチャッとひらき、見覚えのある老人と目が合った。

「おう、気づいたかの。」
「あ、あなたは、身体検査おしらべの時の……、」
「久しいのぅ。その通り。おまえさんが情人イロになる前、診断書を作った医官いかんじゃ。フォフォフォ、その後、城内しろのあちこちから色んな流言うわさが耳まで届くぞい。なかなか元気に活動しとるようだの~。うむうむ、顔色は悪くないのぅ。どうやら頭部あたまは無事のようじゃな。」

 なつかしい顔〔第23話参照〕と再会を果たした恭介は、遅れて状況を把握した。寝台ベッドの上で視線を泳がせると、長方形の窓には白い布が垂れ下がっていたが、チュンチュンと、鳥のき声が聞こえる。まだ早朝らしく、周辺は静かだった。無理して上体を起こすと、右腕に包帯ほうたいがきつく巻かれていた。ちなみに、全裸である。もとより、コスモポリテスに下着は存在しない。治療のため脱がされたと思われる内官布ないかんふは、寝台の柵に引っ掛けてある。しかも、大量の血で汚れていた。

「うげ、マジか……。」
「まじとは?」
「い、いいえ、なんでもありません。それよりレッドは……、スガードくんは無事ですか?」
「おまえさんが助けようとした若い内官のことなら、心配いらん。そいつは無傷じゃった。」
「……そうですか。……それなら良かったです。」
「何が良かったモンかね。おまえさんの右腕は七針ななはりったのだぞ。神経まで損傷していたら、危なかったわ。あと、左足の小指も骨折しとる。鏡を見なければわからんだろうが、っぺたも、ずいぶん腫れとるぞい。さいわい、歯は抜けなかったようだが、打ちどころが悪ければ、最悪、失明しつめいのおそれもあるからの……。次に殴られる時は、顔面だけでも死守せいよ。せっかくの男前おとこまえが、台無しになるぞい。ついでに、下半身の防御も忘れるなよ~? おまえさんの立派な男性器アソコが使いモノにならなくなったら、情人失格だからのぅ。フォフォフォ。」

(……おい、爺さん! 最後のは下ネタじゃんかよ! ってか、顔面だけでもって云われてもなぁ。……あれからどうなったのか、よく覚えてねぇンだけど。状況的に、オレは不良共あいつらに負けたのか。……あぁ、ヤベェ!! ジルヴァンの信頼を裏切ったことになってねーか!?)

 どの道、現在のケガが完治するまで共寝は不可能である。だが、腕の痛みどころではなくなった恭介は、慌てて寝台から抜け出ようとした。
「これこれ! 全裸でどこへ行く気じゃい。今、衣服ころもを準備させておるから、少し待つのじゃ。」
「……ふ、服って、誰に!?」
 内心(レッドか?)と思い扉を注視すると、軽いノックのあと、赤髪の男が登場した。
(うん? あの人は確か……)
 全身黒布くろえの男は、左手につるぎを持っている。30代なかばの容姿で、互いに面識はあった。

「第6王子の、護衛剣士……?」
「はい。わたしはカイルと申します。」
「ああ、やっぱり。よくジルヴァンのうしろにいる武官だよな……!」

    * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

雄牛は淫らなミルクの放出をおねだりする

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...