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第251話
しおりを挟む白っぽい黄色の髪と眼をしたスガードは、ジルヴァンと同じくらいの背丈である。向かい合って立ち話をする恭介は、自然と目の高さが下降した。朝から不要品置き場と化した備品倉庫で、なにやら人目を避けて事におよんでいたスガードは、バツが悪そうに笑顔をつくって見せる。
「あの~、この件は内緒にしてもらえませんかね? なんでしたら、キョースケ様にも貸しますので……、」
「内緒もなにも、わざわざ誰かに吹聴することじゃないだろ。……オレだって、似たような憶えがあるし。」
「ひゃーっ!? 伝票確認の鬼で有名な、あのイシカワキョースケ様も、エロ本なんか読むんスか!?」
はっきり云われて、いっそ清々しい気分に……ならなかった恭介は、「静かにしろ」と声を低めて注意した。スガードが手に隠し持っていたものとは、ずばり、過激な性描写が掲載されている書物だった。しかも、シリーズものらしく表紙には第2巻と印字されている。
(……どの世界でも、女性の全裸集は男のロマンなのか? うん? 待てよ。スガードの指のあたりに見えるのって……)
恭介から「ちょっと貸してくれ」と云われたスガードは、「おお~、同志よ」などとつぶやいてエロ本を手渡した。ちなみに、表題は“究極のエロス”である。表紙を飾る女性は、大胆に素肌を晒しており巨乳だが、恭介は性的な興奮を覚えなかった。
(今朝、スッキリ出してきたばっかだしな……)
学生の頃、付き合っていた女性を抱いた快経験をもつ恭介だが、ジルヴァンの魅力に惚れているため、女体に興味を示したわけではなかった。内容紹介として表紙に記された目次の中に、“雇兵”という文字がある。
(雇う兵ってなんだ? ……傭兵って意味か?)
エロ本にしては重い響きにつき、ペラペラと該当するページをひらいてみたが、恭介は「げっ」と声をあげ、ドン引きした。そこには、想像とは別の世界が表現されていた。花畑で筋肉質な男が女性と交わっていたり、なぜか滝に打たれた女性が背後から胸を揉まれていたりと、意味不明である。もちろん、男女共に衣類は着ていない。貂毛で描いた肉欲画だが、肌色が基調でやけにリアルだった。
(おい、これのどこが傭兵なんだよ!? わけわからん。……うん? もしかして、あれか? 女性側が男に金を払って抱かれてる状況だから、雇い兵って設定か!?)
エロ本の世界観に悩む恭介を見たスガードは、「ぷくく」と、笑いを堪えるのに必死で、自分の脇腹を両手で抱えた。
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