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第250話〈エロすぎるだろ〉
しおりを挟む異世界に来てからというもの、恭介の生活は充実していた。主に事務内官として仕事に追われる日々だが、コスモポリテスの第6王子と両想いになった今、共寝という性交渉の呼び出しも待ち遠しいくらいに感じた。
(……なんて云うかジルヴァンは、いくら抱かれても初心のままなんだよな。……涙目になって悦がる姿はかわいいけど、本当は痛いンだろうなって思うと、少し気が引けちまうンだよな。……潤滑剤がない世界だから、お互いの先走りだけが頼りだし……)
などと、第6王子との閨事を思い返しながら下水溝の個室で自慰行為をする恭介は、「ふっ、はぁっ」と呼吸が乱れた。
(……ジルヴァン)
恋人を自分の腕に閉じ込めることができる時間と場所は限られていたが、離れていても互いの思いは深まる一方で、交際関係は良好だと云えた。
(……キミのことが、こんなに好きになるとはな。ヘテロのオレ自身が、いちばん意外だぜ。……今じゃ、キミのことを考えない日はないってのによ。結局、性別なんてのは除外されて然るべき要素かもな。……うん? いや、まぁ、淫らすぎる関係は不道徳だけど……)
好きになった相手が、必ずしも異性とは限らない。誰かの幸福を願う気持ちは、尊重されるべきだろう。
(……ジルヴァンを護衛するのは武官の仕事だ。身のまわりの世話役は女官で、その他の用事は側仕えのアミィが兼任している……。オレの役目は、寝台の上でジルヴァンを抱くだけなんて、男として、あまりにも情けねぇだろ……。たとえ情人が欲をかくなと周囲から厭味を云われようと、文官になってみせる)
恭介は、下半身の末梢器官から排出したものを水に流して下水溝から出ると、念入りに手を洗った。部屋に戻り、仕事へ向かうため内官布に着替える。宿直明けのザイールは寝室で熟睡中につき、静かに玄関の鍵を締めた。すっかり見慣れた神殿を横目に、中年ふぜいの門衛に通行証を提示すると、いつもどおり執務室へ出勤した。
石造の廊下を歩いていると、その途中にある備品倉庫の扉が数センチほど開いていた。これといって、重要な物品は保管されておらず、たいした問題ではない。誰かが閉め忘れたのだろうと思った恭介は、把手に腕を伸ばした。
(……うん? 人の気配?)
壁際に置かれた古い長机や色褪せた円卓、背もたれが壊れた椅子、ヒビ割れた家具などが積まれている物陰で、こそこそと動く人影が見えた。恭介は足音を立てないようにして近づいた。第三者の存在に気がついて顔をあげた人物は、一瞬「ぎゃっ!?」と驚いたが、互いに同じ内官布を着ているため、すぐに安堵の表情へ変わった。
「ああぁ~、なんすか、も~。心臓が止まるかと思ったら、あなたはえっと……、そうそう、イシカワキョースケ様じゃないっすか。自分は内官のスガードと申します。お、おはようございます。ずいぶん早い出勤なんですね……。」
スガードと名乗った男は、ユスラより歳上に見えたが、恭介より若そうな顔立ちである。こちらの名前を知っているとは意外だったが、両手を背面にまわし込んでいるため「何を見てたンだ?」と、興味本位で訊ねた。スガードは「へへっ」と苦笑いしつつ、素直に差し出した。
その手許に視線を落とした恭介は、(なるほど、そういうことか)と、隠した理由に納得した。
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