恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第243話

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『第6王子の御身おんみに触れることができるのは、必要に応じた場面での医官と、のちに奥方おくがたとなられる女性ひとだけです。』

 もっともらしい口上こうじょうで、ふたりの間に割り込んだカイルだが、ルシオンからジロッと、にらまれた。

『用心棒ごときが、つまらぬ口を挟むな。おれは、仮にも国王の血を引く男士だんじだぞ。ジル、、のカラダに触れてはならぬ理由などない。目障りだ。下がっていろ。』

 厳しい科白セリフをカイルに突きつけるルシオンだが、右手の指でジルヴァンの局部を捉えて離さない。小さなおもり、、、が温かい。身体の中心部をつかまれたジルヴァンは、股をひらいて硬直していた。カイルが視線を背後に送ると、第6王子と目が合った。

『カ……カイル……、』
『王子様、無礼をお許しください。』

 カイルは事前に詫びると、ジルヴァンの肩を引き寄せてルシオンから強引に奪った。グイッと、カイルの腕に抱きあげられたジルヴァンは『わあっ』と云って、驚いた。武官であるカイルが王子のカラダに手を出したのは、今回が初めてのことだった。

『貴様、正気か? いやしい剣士の分際ぶんざいで、わが義弟おとうとに触れるとは、厳罰にしょしてやる。覚悟しておけ。』

 王宮において、専属の護衛兵にも社会的地位があり、乳児期から学童期までの王子に仕える武官は立場が低いため、ルシオンがしたがえる女官のほうが身分が高い。
『何をしている。その者を牢獄ろうごくへ連れていけ。下賤げせんな男から、わが義弟ジルを取り戻すのだ。』
 ルシオンの命令により、扉の外側で控えていた女官が入室すると、カイルの腕から王子を引き離した。
『身の程をわきまえないとは、なんて粗末な武人ぶじんだこと。あなたには、反省文と辞令じれいを書いてもらわねばなりません。こちらへどうぞ。……抵抗されますと、禁軍きんぐんに報告しますので、どうか、冷静な判断を心がけてくださいまし。』
 禁軍とは、罪人を尋問じんもんするだけでなく、国王の指示で処刑を担当する部署である。

『女官さま、ちょっと待って! カイルはそこまで悪くありません。牢屋ろうやになんて閉じ込めないで!』

 幼いジルヴァンでさえ、禁軍という言葉を聞いて『そんな』と、青ざめた。城内に設置されている部署の役割については、日頃の講義で学んでいた。いちど罪人として投獄とうごくされた場合、その者が無罪を訴えて証拠が見つかっても、何かしらの処分はまぬがれない。
『そんなの、絶対にだめ……。連れていかないで!』
 女官の手を振りきってカイルの胴体にガバッとしがみつくジルヴァンに、ルシオンが歩み寄る。

『ジル、離れろ。この男は、今まさに、おまえの良心を乱している。武官とは、沈着冷静に物事の進行を見守る責務があるのだ。……わかるか? さきほどのように、義兄弟きょうだいたわむれを邪推して騒ぎたてるようでは、いちいち信用ならん。おまえとのあいだで起こることを、下品に吹聴されかねないだろう? らぬ誤解があっては迷惑だ。』

『でも、だってカイルは……、』

『王子ならば理解することだ。』

 いつの間にか、互いに敬語を忘れて呼び合っていた。ジルヴァンは、カイルが連行されるようすを黙って見送るしかなかった。

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