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第227話
しおりを挟む真夜中に、恭介から認可証を提示された番人は、直槍を右手から左に持ち変えると、出入口の通行を許した。王宮関係者の扉を抜け、石造の廊下を歩く恭介は、壁の洋燈を目に留めた。薄暗い視線の先に、揺らめくロウソクの火は弱く、今にも消えそうだ。いくら番人が立っているとはいえ、背後に気をつけながらジルヴァンの待つ寝間へ向かった。
(……キミを抱けるのは嬉しいけど、情人として寝間に向かうのは、なんかちがうよな。オレたちは恋人同士のはずだ。……そう思っていいンだよな?)
ごく自然に性交渉へ発展する雰囲気をつくり出せない恭介の立場は、第6王子の性欲を処理する相手と勘違いされてもおかしくない。互いを想う気持ちが等しいからこそ、肉体を求め合う関係を築きあげている。たとえ王族のあいだで情人の存在が公認されていたとしても、複雑な心境だった。
「お待ちしておりました。イシカワキョースケ様。」
「ジルヴァンに会いに来た。」
「どうぞ中へ。」
寝間の前に立つふたりの女官から頭をさげられた恭介は、久しぶりの共寝にいくらか緊張しつつ、ジルヴァンの顔を見て挨拶した。
「ジルヴァン、元気だったか?」
「キョースケ!」
「わっ!?」
室にはいるなり正面から抱きつかれた恭介は、早速ジルヴァンと口づけを交わした。
「……んっ、キョースケぇ。……あぁ、後ろ髪が伸びているな。」
「ちょっと切る時間がなくてな。どうした? もう顔が赤いぞ。」
「貴様を呼ぶのは数ヵ月ぶり故、すまぬ……」
「なんで謝るンだよ。莫迦だな。」
「ばかとな? ぶ、無礼ではないか!?」
「ははっ、冗談だよ。」
「むぅっ、キョースケめ!」
プイッと顔を背けて寝台に横たわるジルヴァンを見て、恭介は微笑ましく思った。自分以外の男に、断じて穢されない第6王子が、愛しくてたまらない。あとから寝台に近づくと、サイドテーブルの洋燈を枕もとへ吊るし、ジルヴァンの表情がよく見えるようにした。
「……キョースケ、」
「うん?」
「腰紐を……、」
「ああ。頼むよ。」
情人が括る腰紐は、王族しか解くことができない決まりになっている。細い指が恭介の腰紐をシュルッと、床へ落とした。ジルヴァンも薄い内衣しか身につけていないため、恭介の手で衿の前をひらかれた。
「あっ、キョースケっ、」
片方の乳首に指先で触れた途端、ジルヴァンの呼吸が速くなる。ゆっくり胸もとを愛撫した恭介は、ジルヴァンを裸身にした。自分も絹衣を脱ぐと、下半身を密着させて抱き合った。
「キ、キョースケの性器は、相変わらず大きいな……。」
「……そりゃ、興奮してるしな。」
恭介に膝を立てられたジルヴァンは「待て」と、なぜか行為を中断した。
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