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第225話
しおりを挟むとりあえず、ザイールから髪結いの長い紐をもらい、すずめのシッポみたいに後ろ髪を縛って出勤した恭介を見たアミィは、「あら!?」と意外な反応を示した。
「やだぁ、キョウくんったら一瞬、先生に見えたわ~。」
「先生って、アミィさんが通ってる私塾のですか?」
「そうよぅ。まあ、向こうはもっとおじさんだけどね~。うふふ、キョウくんのほうが何百倍もいい男だわ~。」
「うん? あ、ああ、どうも……?」
アミィは遅れて出勤してくるなり、執務室で仕事中の恭介を見て、暢気な会話に及ぶ。文官試験日が近づいてきた恭介は、定位置の椅子に座るアミィを目で追って、話を続けた。
「……王族の側仕えって、何人くらい、いるンですか?」
「たくさんいるわよ~。数千人ってとこじゃないかしら。」
「そんなに?」
「もちろんよぅ。だいたい王族といってもその親類も含むわよ~。ひとりに対して武官と女官が必ず専属で配置されるけど、側仕えの雇用は基本的に制限がないのよ。だから、ジルさまも、あたし以外の高官をもっと引き抜けばいいと思わない~?」
「高官を引き抜く……、ですか。」
「ええ、そうするべきなのよぅ。あたしひとりじゃ、手に負えない時があるもの~。側仕えは多いほうが便利じゃない~。」
(……へぇ、なるほど。側仕えは何人でも雇えるのか。てっきり、アミィの役職をオレが奪うことになるかもって思ったけど、ふたりでジルヴァンを支えることも可能なわけだ……)
第6王子いわく、野心を持たないアミィだからこそ、信用して側仕えに選んでいる。ジルヴァンからそう聞かされていた恭介は、こっそりアミィを評価したが、日頃の言動を見るかぎり、頼りない上司でしかない。だが、裏ではきちんと第6王子のために働いている。アミィの二面性は、恭介と似たような側面があった。
(周りから見たら、オレは内官のひとりで、ジルヴァンの情人だと知る者は少ないからな……)
恭介はただ、やるべきことをしているだけである。秘密めいた事柄は別世界の住人という点くらいだが、文官に採用された暁には、ジルヴァンにすべて打ち明けようと決意していた。
* * * * * *
※ディシプリーヌ(discipline)……規律、統制、戒律、人間社会・集団の規範、しつけ、などの意。
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