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第223話〈ディシプリーヌ〉
しおりを挟む祝賀式典の翌日、恭介は執務室で昼休憩を過ごしていた。長机に向かい合って座るユスラは、恭介の胸もとに光る勲章を見ては、何度も「すごいなぁ」と、つぶやいてくる。
「なんだか自慢してるみたいで気が引けるけど、アミィから、内官布を着て城に出勤するときは勲章を身につけろって云われてさ。これは仕方なくって感じなんだ。」
「何を云うのですか。自慢したって良いことですよ! 功労賞だなんて立派ではありませんか。同じ内官として、ぼくも鼻が高いです。キョースケさんは尊敬できる先輩です!」
「サ、サンキュー……。」
あまり勲章ばかり見つめられては気まずくなるため、恭介は弁当箱を片付ける動作で席を立つと、ユスラは自分の手許へ視線を戻した。少しずつ恭介の身分は変化を遂げていたが、なにも昇格が目的ではなく、ジルヴァンに頼られるような人間になりたかった。最終目標は、第6王子の側仕えである。それは周囲の人間から視線を浴びる立場でもあり、恭介の品格は重要だった。
(堅苦しいのは性に合わないけど、ジルヴァンのそばにいるためには、やっぱりそれなりの階級は必要なンだよなぁ……。高官だと内政の仕事に関与するっポイから文官どまりがいいンだけど……。はっきり云って政治とか興味ねぇし……)
文官を目ざす者は、いずれ高官に召し上げてもらえるよう、権力者の門下生となり、より詳細な国家規律や礼儀作法を学ぶことになる。アミィでさえ、有名な高官の私塾に通い、統制力や文化的な事柄の教育を受けていた(つい最近、知った)。
(……コスモポリテスに来てから色々あったけど、あともうひとふんばりで、オレの目標は達成できるンだ。ここで意地をみせなきゃ、男が廃るよな)
恭介の日常は決して平穏ではなかったが、異世界での生活は充実していた。いつか、元の世界に帰りたいと思う気持ちも、すっかり薄れている。
(なんでこの世界に迷い込んだのか、原因は謎のままだけど、考えるだけ時間のムダかもな。……ってか、ここまで来て、いきなり日本に戻されたほうが困るぜ。……オレはずっと、コスモポリテスにいられるンだよな?)
ジルヴァンを残して消えたくない恭介だが、自分が特異な存在であることも忘れてはならない。
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