恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
224 / 364

第223話〈ディシプリーヌ〉

しおりを挟む

 祝賀式典の翌日、恭介は執務室で昼休憩を過ごしていた。長机テーブルに向かい合って座るユスラは、恭介の胸もとに光る勲章を見ては、何度も「すごいなぁ」と、つぶやいてくる。

「なんだか自慢してるみたいで気が引けるけど、アミィから、内官布ないかんふを着て城に出勤するときは勲章を身につけろって云われてさ。これは仕方なくって感じなんだ。」

「何を云うのですか。自慢したって良いことですよ! 功労賞だなんて立派ではありませんか。同じ内官として、ぼくも鼻が高いです。キョースケさんは尊敬できる先輩です!」

「サ、サンキュー……。」

 あまり勲章ばかり見つめられては気まずくなるため、恭介は弁当箱を片付ける動作で席を立つと、ユスラは自分の手許へ視線を戻した。少しずつ恭介の身分は変化を遂げていたが、なにも昇格が目的ではなく、ジルヴァンに頼られるような人間になりたかった。最終目標は、第6王子の側仕そばづかえである。それは周囲の人間から視線を浴びる立場でもあり、恭介の品格は重要だった。

堅苦かたくるしいのはしょうに合わないけど、ジルヴァンのそばにいるためには、やっぱりそれなりの階級は必要なンだよなぁ……。高官だと内政の仕事に関与かんよするっポイから文官どまりがいいンだけど……。はっきり云って政治とか興味ねぇし……)

 文官を目ざす者は、いずれ高官に召し上げてもらえるよう、権力者の門下生もんかせいとなり、より詳細な国家規律や礼儀作法を学ぶことになる。アミィでさえ、有名な高官の私塾にかよい、統制力や文化的な事柄の教育を受けていた(つい最近、知った)。

(……コスモポリテスに来てから色々あったけど、あともうひとふんばりで、オレの目標は達成できるンだ。ここで意地をみせなきゃ、男がすたるよな)

 恭介の日常は決して平穏ではなかったが、異世界での生活は充実していた。いつか、元の世界に帰りたいと思う気持ちも、すっかり薄れている。

(なんでこの世界に迷い込んだのか、原因は謎のままだけど、考えるだけ時間のムダかもな。……ってか、ここまで来て、いきなり日本に戻されたほうが困るぜ。……オレはずっと、コスモポリテスにいられるンだよな?)

 ジルヴァンを残して消えたくない恭介だが、自分が特異な存在であることも忘れてはならない。

    * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...