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第222話
しおりを挟む祝賀式典が無事に終わりアミィと合流した恭介は、プハッと吹かれた。
「あはっ、あははっ! あら、いやだわ、笑いが止まらない。ごめんなさいね、キョウくん……! ぷぷぷっ!」
「ちょっとアミィさん、少しは気をつかってもらえませんか。これでも、かなり神経を尖らせていたンですよ。」
「そ、そうよね、そうだわよね。きゃははっ、ごめんなさい~。キョウくんのあんな畏まった顔、稀少だったわ~。」
(そりゃ、こっちの科白だっての。アミィこそ、これまで見せたこともないような表情を維持してたじゃんかよ……)
あれほど多くの関係者が集まる式典に初めて参列した恭介は(アミィと同じく)、ふだんと異なる表情を作っていた。それは意識しての結果だが、アミィに笑われると、恥ずかしくなってきた。
「そんなに、おかしかったですか……?」
不安を感じて訊ねると、アミィから「おかしいどころか、神がかってたわ~!」と、さらに吹かれた。恭介は無遠慮な上司の意見など放っておき、胸もとの勲章へ指で触れた。立体的な彫刻で、植物の葉っぱのような形をしている。大きさは5センチくらいだが、贅沢に金や銀が使われており、キラキラと美しく光っていた。
(とにかく、大きなミスをしなくてホッとしたぜ……)
日頃、見たことない分野の人間も参列していたため、それなりに緊張した恭介は胸を撫でおろした。ひとつひとつ与えられた役目に真摯に取り組めば、やがてジルヴァンの足許に手が届きそうな気がした。
(よし。これで残す課題は文官試験のみだ。まだまだ気を弛めちゃいられないぜ)
祝賀式典のあとも恭介の躍進は続く。すべては、恋人である第6王子を幸せにするため、誰よりも近くで見守るために。
(……情人だからって、共寝ができる優越感に浸ってちゃ、格好悪いもんな。だから、この勲章は第一歩になるぜ、ジルヴァン。……夜だけでなく、昼間でもキミのそばに立っていたいンだ。オレの願望が、迷惑じゃなきゃいいけどな……)
ジルヴァンと、より内面的な充実を図ろうとする恭介だが、生身のカラダは、すでにどちらも相手に捧げている。本能の赴くまま、ふたりの距離は確実に近づいていた。
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