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第221話
しおりを挟むドドンッと、ひときわ大きな太鼓が鳴り響くと、いよいよ主催陣が登場した。式典の代表を担う王族は、恭介の思ったとおりの人物だった。地面に長い裾を擦りながら胸を張って雄大に歩くシグルトは、参列席の中に恭介の姿を見つけ、小さく頷いた。
(ああ、やっぱりな。オレはシグルトから勲章を手渡されるのか。……だからこの前、執務室に来たンだもんな。ジルヴァンのおかげで、ハラハラしたぜ)
広場に現れた王族と思われる顔ぶれに、ジルヴァンは見あたらなかった。城内のどこかで、式典のようすを見ているかもしれない。恭介は推薦者の期待と意向を裏切らないよう、背筋をピンと伸ばした。アミィは関係者席へ移動しているため、恭介とは反対側に位置する場所に見えている。ふだん執務室に居るときよりも、キリッとした表情を作っているため、なんとなく笑えた。アミィの容貌は長い三つ編みを含め、やや中性的だ。オネェ言葉を用いる理由を訊ねてみたことはないが、すっかり耳に馴染んでいるため違和感はなくなっている。
シグルトが壇上に立つと、進行役が前置きを声高に述べる。現在地は城内であっても天井のない野外につき、青空に浮かぶ太陽の光が眩しいくらいだ。恭介は自分がこの場に参列する意味を深く受けとめ、今後の励みにしようと心に決めていた。名前を呼ばれた者は「はい」と返事をして、第4王子の面前へ進みでる。目の高さで両手を重ね合わせ、頭を二回さげる。恭介の順番がくると、トンッ、トトンッと小太鼓の演奏が始まった。
「次に、事務内官・イシカワキョースケよ。前にでよ!」
進行役に名前を呼ばれ、「はい!」と返事をして立ちあがる。風変わりな名前と、めずらしい黒髪に視線が集中した。だが、恭介は堂々と前を向いて歩き、シグルトに頭をさげた。
「ここに、そちの堅実たる働きを認め、勲章を授ける旨とする。イシカワキョースケは、末永く我が国の発展に貢献することを誓い、謹んで此れを受けよ。」
「これからも我が身をもって尽力することを誓い、謹んでお受けします。」
恭介はアミィに教わったとおりの言葉で返し、シグルトの手から葉っぱのような形をした勲章を受け取った。
(うおっ!? 指が勝手にふるえるぜ!! 落ちつけ、落ちつけオレ……!!)
うっかり地面に落下させては、式典の空気が大変マズイことになる。恭介は緊張のあまり、すんなり胸もとに装着できず、いくらかもたついてしまった。なんとか身につけて向き直ると、シグルトは失笑を堪えていた。
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