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第213話
しおりを挟む「アミィさん。オレに何か云うことはありませんか?」
と、上司に訊ねる夢をみた恭介は、朝イチバンの頭痛に顔をしかめた。
(……ぐおぉっ、なんだこれ!?)
ガンガンと後頭部を金槌で叩かれるような鈍痛がする。上体を起こして眉根を寄せていると、宿直明けのザイールが帰ってきた。
「キョースケさま、おはようございます。」
「お、はよ。ザイール……、」
「どうかされましたか?」
寝起きとはいえ、同居人の反応が鈍いため、ザイールは恭介の顔をのぞき込んだ。
「顔色が悪いみたいですね。二日酔いでしょうか?」
恭介が寝台代わりに使う長椅子の脇に、果実酒の空瓶が置いてある。それは数日前に呑み切ったもので、今朝の頭痛の原因とは結びつかない。恭介は横へ首をふった。
「……なんでだろうな。こんなに痛いのは初めてかもしれない。」
蟀谷に指を添えて窓へ視線を向けると、小雨が降っていた。
(……これってまさか、気圧頭痛とか?)
あまりにも激しくズキズキ痛むため再び横になると、ザイールが心配して助言した。
「あの、キョースケさま。体調がよろしくないのであれば、お仕事は休まれたほうが良いかと思います。……頭が痛むのですか?」
「あ、ああ……。風邪を引くような覚えはねぇし、きのうは酒を口にしてないから、二日酔いとも違うだろうけど……、」
「それでは、片頭痛かもしれませんね。以前、わたしにも覚えがあり、薬屋さんで鎮痛剤を購入したことがあります。……その時の残りがあったはずです。服用期限が切れていないか見てきますので、少々お待ちください。」
「サンキュー……。」
(この世界にも市販薬とかあるのか。それなら少し助かるな……)
コスモポリテスに飛ばされてから初めて片頭痛を患った恭介は、ザイールの的確な対応に内心ホッとした。なにより、情人の日常は健康第一である。寝込んでいる時に、呼び出しを受けるわけにはいかない。
(最近、夜遅くまで勉強してたから、脳ミソが疲れちまったのかもな……)
失敗が許されない文官採用試験まで気が抜けない恭介は、自分が思う以上に神経がすり減っていた。
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