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第212話
しおりを挟む恭介と性交をするたび、極度の緊張と興奮を覚えるジルヴァンは、深呼吸をして昂ぶりすぎた体温を下げた。恭介の男根は一般的な大きさより立派で、正直なところ、ジルヴァンは抱き合った後に性交痛を感じたが、それは受け身にとって避けられない症状であるため、平気なフリをした。なにより、恭介の腕の中は、地位や身分を忘れて安心できる、唯一の空間であった。そして、自分が選んだ最初で最後の情人につき、手放すことなど考えもしなかった。
「……キョースケよ、アミィから話は聞いたか?」
寝台から抜けでて絹衣をはおる恭介は、「うん?」と首を傾げた。コスモポリテスでは珍しい黒髪と黒眼をした情人は、ジルヴァンの顔を見据えた。恭介は女官のように、王子へ頭をさげる必要はない。少なくとも、ジルヴァンとふたりで過ごす間は、互いの立場など関係なかった。
横向きでこちらに顔を向けるジルヴァンの表情は、少し疲れているように見えた。恭介は、受け身の負荷を減らす方法を暗中模索したが、最高の快楽を享受されたばかりのジルヴァンは微かに笑い、会話を続けた。
「なんだ。まだ聞いておらぬのか? 就労者の功績をねぎらう式典は、1週間後であるぞ……?」〔第147話参照〕
「なんの話だ?」
実際、なにかと忙しいアミィは報告を後まわしにしていた。第6王子の推薦により、恭介は国から勲章を授与されることが決定している。しかし、アミィから説明を聞いていなかった恭介は、急展開すぎて驚愕した。
「オレに勲章だって!? ジルヴァン、なんでまたそんなことを……、」
「何か問題でもあるのか?」
「そりゃ、さすがに過大評価すぎやしないか? オレはまだ、内官になって1年足らずだぞ。」
「勤続年数ではなく、功績が重要なのだ。貴様の仕事ぶりは、アミィから事前に確認しておる。……よもや、辞退などせぬよな?」
「う、うん? ああ、そんなことはしないが、ジルヴァンの厚意の表明の仕方は突拍子もないな。」
王族の立場を利用できるジルヴァンは、不可能を可能にする権力を持っている。だが、むやみに使うべきではないと考える恭介は、素直に喜べなかった。だいいち、出世に興味はない。密かに進行中の文官を目ざす理由も、ジルヴァンの側に身をおく我欲を優先した結果である。
(もしかして、功労賞ってやつか? そんなものもらえるほど、この国に忠誠は誓ってねぇんだけどな。ジルヴァンは、オレを買いかぶりすぎてるよなぁ……)
恋は人を夢中にさせ、理性や常識を失わせるものである。ほんの一瞬でも、ジルヴァンに間違った判断で権力を行使されては恭介の良心が痛むため、共寝の際は、とくに注意深く会話を進める必要があった。
(なんか、すげぇ尽くされてる気分……。オレは、自分の力でキミに近づきたいのによ……)
身装を整えた恭介は、寝台の枕もとに座り、ジルヴァンの額へキスをした。愛おしい人を独占する共寝は、身に余る贅沢だ。
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