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第211話〈第3部スタート〉
しおりを挟む門のあたりで顔を合わせた人間に、声をかける者がいた。
「オレは半獣のリゼル、こっちは人狼のウル。戸籍をもらいにきた。」
「うん? 戸籍なら、城じゃなくて、向こうに見える神殿の神官に相談してくれ。」
「……おまえ、なにも愕かないのか?」
「愕くって、なにが?」
「オレたちは人間じゃないンだぞ? 半獣と人狼って云ったのに……!!」
頭巾を取って獣耳を見せたリゼルと、オオカミの姿から人型になるウルを見ても顔色ひとつ変えず応対する男は、石川恭介といって、日本人である。自分こそ別世界からやってきた異例な存在につき、半獣や人狼が目の前にあらわれても不思議に思わなかった。
* * * * * *
時は、1年半前に戻る。ゼニスは監視塔におり、シリルは獣人の村で暮らしていた。その頃、コスモポリテス城の事務内官として執務室に身をおく27歳の恭介は、この国の第6王子=レ・ジルヴァン(20歳)の情人として共寝の責務を果たしていた。王族に選ばれた情人は、呼び出しを受けた場合、専用の絹衣を着て性行為に及ぶ必要がある。ちなみに、恭介はヘテロだが、同性のジルヴァンに欲情する過程を経て、攻め側として身を捧げることができた。
「……ん、ぁんっ、キ、キョースケぇ!」
「ジルヴァン……、好きだ……、」
「はっ、あっ!? あぁーっ!!」
夜遅く、何度目かの呼び出しに応じた恭介は、第6王子の寝間で腰をふっていた。相手の体内領域へ熱い飛沫を放流したあともユサユサと躰を動かして、ジルヴァンをあえがせる。
「うっ、うぅっ、キョースケぇ……ッ、」
「キツイか? ジルヴァン、」
「……っ、そうではない! 勝手に声がでてしまうのだ!」
「なら、もう少しだけいいよな?」
「う、うむ。好きにせよ。」
「サンキュー。」
恭介はジルヴァンと躰をつなげたまま口づけをすると、右胸の乳首へ舌を這わせた。カリッと前歯で刺激を与えると、「わっ」と云ってジルヴァンの頬が赤く染まる。
「……キョースケよ。そんなところばかり吸いついても、何もでぬぞ。……あっ、んんっ、」
ジルヴァンは男につき、胸の突起に何かを期待しているわけではない。たんに、ジルヴァンの反応がかわいくて、つい触れたくなる恭介なのだった。
* * * * * *
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