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第198話
しおりを挟む獣族の血が流れ、人型をとる種族の多くは、最初の1年で骨格の成長を遂げる。産まれてから半年間のあいだに(母乳だけでなく)、いかに栄養のある食物を摂取できるかで、その後の見た目に大きな影響を及ぼした。また、親から受け継ぐ遺伝的要素も大きい。
ウルは育児放棄された人狼だったが、精神力や体力が人並み以上に備わっており、きょうまで自然界を生き抜いてきた一匹オオカミである。なんの不自由もなく育てられたリゼルと異なり、野性的な感覚は研ぎ澄まされていた。
ウルと、ふたりきりで留守番をすることになったリゼルは、両親の前では話しにくい事柄について、この際、きちんとまとめておくべきだと考えた。
「おい、ウルムナフ。いつまでも母さんの寝床を探ってないで、いい加減、離れろよ。」
ウルはリゼルの挑発に乗らず、寝床の藁をペロリと舐めると、いくらか欲情した。
「……は、ははっ。いちどくらい、雌を抱いてみてぇなぁ。おまえの母親は、最高にうまそうだしよ。オレサマの男根を使ったらどんなふうに喘ぐのか、想像するだけで興奮するぜ。……あのゼニスって男、人間のくせに獣人に子を産ませるとは、そうとう立派なタマがついてるんだろうな。」
「それって、父さんをバカにしているのか? おまえ、なんでそんな厭味を云うんだよ。少しはまともになれ!」
ウルに好きだと云われたも同然のリゼルだが、シリルに執着する言動が赦せない。ただでさえ、相手のほうが物知りで本能的な強さを持ち合わせている。世間知らずで歳下のリゼルは、弱点を認めざる負えなかった。悔しいと思う反面、ウルの存在が大きくなりすぎて、どんな感情を向けてよいのかわからなくなっていた。
「……くそっ。おい、ウル! 表にでろ!! 鍛錬するぞ!!」
気持ちを整理したいリゼルだが、ウルの曖昧な態度に腹が立ち、いつものように短剣を振ることにした。ところが、いざ腰から引き抜くと、急に仕掛ける方法がわからなくなった。頭の中が真っ白になり、ウルの接近を防御できず地面に押しつけられた。
「……くっ、くそ。どうなってる!?」
「どうもこうもないだろ。」
「そうやって、何もかも見透かしたような口をきくな!」
「わかりやすくて見透かすまでもねぇよ。云っておくが、オレサマに嫉妬しても意味ないぜ。」
「誰がおまえなんかに妬くか!!」
「そうじゃない。シリルにだよ。まったく素直じゃないな。そんなに雌落ちしたければ、望みどおりにしてやる。」
「なにをする気だ!? ……うっ!?」
強引に口づけられたリゼルは、頭の芯がグラつき、抵抗できずにウルの吐息を呑み込んだ。
「や、やめろ……、」
言葉を振り絞っても、ウルは云うことを聞いてくれない。リゼルを軽々と抱きあげると、洞窟の奥へ連れ込んだ。シリルの寝床へ押し倒し、リゼルを裸身にすると、自分も一張羅を脱いだ。
「……ウ……ル、なにする気だ?」
「性交に決まってるだろ。もう、がまんならん。最後までヤらせてもらう。」
「ふ、ふざけるなっ、」
「オレサマは本気だ。おまえを孕ませたくなった。」
「オレは男だ……!」
「おまえは女だよ。正確には、オレサマだけの雌になれ。」
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