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第184話〈半獣とオオカミ〉
しおりを挟むシリルの体内へ(無理やり)子胤を放出しようと、腰を密着させることに集中するオオカミは、背後が隙だらけだった。嫌がるシリルの腕を掴み、股のあいだに己の一物を向かわせると、ヒュッと、何かが頬をかすめた。振り向いた先に、短剣の刃がキラリと光る。
「母さんから離れろ!!」
「リゼル!?」
城下町での買い物をすませ帰路につくリゼルは、洞窟へ近づくにつれ、シリルが発する冷や汗の匂いを嗅ぎつけた。その身に危険が迫っている状況を察し、ゼニスを振り返る。聴覚が発達しているゼニスもまた、すぐさま対処が必要な事態であることを承知して頷く。
「父さん。」
「ああ。相手はひとりのようだ。おまえは足が速い。先に行け。」
「わかった。」
リゼルは武器屋で譲り受けた短剣を手に、シリルの元まで疾走した。人型になってシリルを襲うオオカミの姿を視野に捉えたリゼルは、素速く背後にまわり牽制する。力負けのシリルは、ぎゅっと瞼をとじていたが、リゼルの声を耳にして、ガバッと起きあがった。
「おまえっ、よくもオレの母さんを!! 覚悟しろ!!」
人間らしい身装に様変わりしていたリゼルだが、怒りのあまり頭巾の下で獣耳のカタチが盛りあがっている。オオカミは瞬時に後方へ飛び跳ねたが、遅れて到着したゼニスと、挟み撃ちにされた。
「父さんっ! そいつを逃さないでっ! 母さんを襲ってたンだ!!」
「……ほう、シリルに手をだしたのか。」
オオカミと対峙したゼニスは、腰から剣を引き抜くと、
「来い。おれが相手になろう。」
と云って、わざと挑発した。長い焦茶色の髪と同じく、下半身も陰毛で隠されているため、相手が全裸である点は、さほど気にならなかった。リゼルのような獣耳はなく、尻尾も生えていなかったが、正体が人間ではないことは察しがついた。なぜなら、シリルより更に長く鋭い爪をしており、つりあがった目は、獲物を狩るときの肉食動物のような眼光を放っている。
「……ところで、おまえ何者だ? 獣人ではないな。」
「ふん。人間のくせに生意気な口をききやがる。このオレサマを、そんな剣で倒せるとでも思っているのか?」
「さあな。いっそ、素手で殺り合ってもかまわん。」
「ふうん? ずいぶん腕に自信があるようだな。……命知らずの人間め。あとで後悔するぞ。」
ゼニスより数センチほど上背があるオオカミは、舌なめずりをした。
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