恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第183話

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 かつてオオカミとは、人間ひとを食い殺す猛獣として知られ、獣人けひとのあいだでも、その恐ろしさから真神まがみと呼ばれていた。

 ひとりで留守番るすばんをしていたシリルは、けがをしたはぐれ、、、オオカミを保護すると、食糧を分け与えて過ごした。さらに、野生動物にしてはめずらしく、人懐っこい性格をしており、シリルのほおや指をペロペロと舐めてきた。

「ふふふ、おまえは人を襲わないンだね? それとも、ぼくが獣人けひとだからかな。」

 シリルはワンピースを着ていたが、一緒に寝床で丸くなるオオカミは鼻先をヒクヒク動かして、相手の臭気しゅうきをよく確認しているようだった。互いの体温が心地よく感じるため、シリルもオオカミもいつの間にか眠ってしまった。数時間後、なんとなく人の気配を感じて目を覚ましたシリルは、

「わーーーっ!?」

 と、絶叫する。見れば、知らない男と寄り添って眠っているではないか。しかも互いに裸身はだかである。シリルが自分で脱いだ記憶はないため、あたふたとワンピースを探した。寝床から抜け出そうとすると、ガシッと足頸あしくびつかまれた。

「なっ、なにをする!!」

 シリルの自衛本能が働き、クワッと尖頭歯けんしがのびる。全裸の男はシリルの威嚇いかくにかまわず、自分のほうへグイッと引き寄せた。シリルの股をひらき、舌先で敏感な部位を舐めると、口腔に含んでしまう。

「やぁっ!? そこはダメぇ!!」 

 ゼニス以外の男に陰茎をくわえられたシリルは、必死に抵抗した。
「離せ! 離せっ! 離れろぉ!!」
 腕をふりまわして男の背中をボカボカ叩くと、行為を中断された。それから、涙目になっているシリルの顔をのぞき込むなり、男は低い声を発した。
「……どういうことだ? おまえはメスのはずだ。それなのに、なぜ、こんなものがついている?」
「あっ!? またぁ! そこを触っていいのはゼニスだけだってば!!」
 男の指が、シリルの太腿の内側を這っている。不本意ながら、小さく腰が慄えてしまうシリルは、いやいやと、首を横に振った。

「いったい誰なの!? 早く洞窟ここから出ていけ!!」
「なんだよ、冷たいな。最初に優しくしてきたのはそっちのほうだろう。」
「……え?」
 
 シリルはふしぎそうな顔をしたが、男の髪や眼の色には見覚えがあった。この男、、、はオオカミだ。まさかの人狼じんろうである。獣人とは異なり、祖先そせんの血が濃いため、人型になれる時間は少ない。男の焦茶色の長い髪は、たてがみにちがいなかった。体格もよく腕力が強いため、シリルの抵抗はむなしかった。

「……そ、それで? ぼくをどうしたいの。もしかして繁殖はんしょくが目的?」
「ああ、それもいいな。おまえは雌なんだろう? このまま抱けば妊娠するのか?」
「し、知らない。」
「ふうん? なら、ためしてみるか。」

 男はそう云うと、本気でシリルと交尾を始めた。

     * * * * * *
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