184 / 364
第183話
しおりを挟むかつてオオカミとは、人間を食い殺す猛獣として知られ、獣人のあいだでも、その恐ろしさから真神と呼ばれていた。
ひとりで留守番をしていたシリルは、けがをしたはぐれオオカミを保護すると、食糧を分け与えて過ごした。さらに、野生動物にしてはめずらしく、人懐っこい性格をしており、シリルの頬や指をペロペロと舐めてきた。
「ふふふ、おまえは人を襲わないンだね? それとも、ぼくが獣人だからかな。」
シリルはワンピースを着ていたが、一緒に寝床で丸くなるオオカミは鼻先をヒクヒク動かして、相手の臭気をよく確認しているようだった。互いの体温が心地よく感じるため、シリルもオオカミもいつの間にか眠ってしまった。数時間後、なんとなく人の気配を感じて目を覚ましたシリルは、
「わーーーっ!?」
と、絶叫する。見れば、知らない男と寄り添って眠っているではないか。しかも互いに裸身である。シリルが自分で脱いだ記憶はないため、あたふたとワンピースを探した。寝床から抜け出そうとすると、ガシッと足頸を掴まれた。
「なっ、なにをする!!」
シリルの自衛本能が働き、クワッと尖頭歯がのびる。全裸の男はシリルの威嚇にかまわず、自分のほうへグイッと引き寄せた。シリルの股をひらき、舌先で敏感な部位を舐めると、口腔に含んでしまう。
「やぁっ!? そこはダメぇ!!」
ゼニス以外の男に陰茎を咥えられたシリルは、必死に抵抗した。
「離せ! 離せっ! 離れろぉ!!」
腕をふりまわして男の背中をボカボカ叩くと、行為を中断された。それから、涙目になっているシリルの顔をのぞき込むなり、男は低い声を発した。
「……どういうことだ? おまえは雌のはずだ。それなのに、なぜ、こんなものがついている?」
「あっ!? またぁ! そこを触っていいのはゼニスだけだってば!!」
男の指が、シリルの太腿の内側を這っている。不本意ながら、小さく腰が慄えてしまうシリルは、いやいやと、首を横に振った。
「いったい誰なの!? 早く洞窟から出ていけ!!」
「なんだよ、冷たいな。最初に優しくしてきたのはそっちのほうだろう。」
「……え?」
シリルはふしぎそうな顔をしたが、男の髪や眼の色には見覚えがあった。この男はオオカミだ。まさかの人狼である。獣人とは異なり、祖先の血が濃いため、人型になれる時間は少ない。男の焦茶色の長い髪は、たてがみにちがいなかった。体格もよく腕力が強いため、シリルの抵抗はむなしかった。
「……そ、それで? ぼくをどうしたいの。もしかして繁殖が目的?」
「ああ、それもいいな。おまえは雌なんだろう? このまま抱けば妊娠するのか?」
「し、知らない。」
「ふうん? なら、試してみるか。」
男はそう云うと、本気でシリルと交尾を始めた。
* * * * * *
1
お気に入りに追加
186
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?




身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる