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第181話〈ひとりで留守番〉
しおりを挟むゼニスとリゼルが城下町へ向かった後、洞窟の奥ではシリルがひとりで過ごしていた。これまで、朝から晩まで獣王子の傍には世話係が待機していたが、現在では身のまわりのことは自分でするしかない。だが、まだまだゼニスの手を借りる場面も多く、ひとりで長い時間を送るのは、これが初めての経験だった。シリルが食事に困らないようにと、ゼニスによって3日分の食べ物と水は用意されていた。
「ふふっ。ゼニスってば本当に器用だなぁ。ぼくだって、少しは料理くらいできるのに……。」
物事をうまく処理する手段をつかみ、巧みに立ちまわるゼニスだが、夜の営みに至っては、シリルのほうで辛抱が必要だった。
「……ゼニスとエッチするのは好きだけど、いつもすごく興奮して頭がおかしくなっちゃうから、やっぱり迷惑なのかなぁ。」
最近はご無沙汰につき、シリルは不安を感じた。リゼルを出産後、ゼニスとの性交を何度かくり返したシリルだが、いずれも妊娠することはなかった。その理由がわからずにいるシリルは、ゼニスが特別な人間で、望まない妊娠を回避する方法を知っているのだと誤解釈していた。
「……ゼニス、……ゼニス。」
大好きなひとのことを考えるうち、シリルの下半身は熱くなってきた。両性具有としての役目はすでに果たされているため、生理現象は男性特有の症状が引き起こるように変換していた。つまり、シリルの性別は雄である。発情した雌と交尾した場合、相手を妊娠させることが可能な成獣となっていたが、本人による性知識は欠如していた。今のところ、ゼニスのみが知る事実である。とはいえ、生来の属性が受け身であるシリルが、雌に欲情する確率は非常に低い。
「うわぁ、どうしようこれ。ゼニスがいなきゃ、わからないよぅ……!」
勃ちあがってしまった自身の一物を見て困惑するシリルは、おそるおそる指を絡め、そっと擦った。
「あっ、うっ、……はぁっ、はぁっ、」
ビクビクと腰が慄えたが、なんとかひとりで己の欲望を落ちつかせた。
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