恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
178 / 364

第177話

しおりを挟む

 数ヵ月ぶりに城下町へやって来たゼニスは、真っ先にリゼルの身装みなりを整えた。監視塔サーベイランスでのかせぎを持参しているため、会計に支障をきたす心配はない。試着室で、初めて人間らしい衣服ころもそでを通したリゼルは、感動を覚えた。

「どう? 父さん、似合ってる?」
「ああ。おまえはこれから、ますます背が伸びるだろうから、予備の上下も買っておくとしよう。」
「オレ、父さんよりデカくなるかな?」
「たぶんな。」

 ゼニスと同じく帯巻きベルト付きの衣服ころもに着替えたリゼルは、皮靴くつを履くとピョンピョンその場で跳ねた。

「どうだ?」
「うん、大丈夫!」
「よし、あと一着いっちゃく選べ。」
「えっとねぇ、それじゃあ、あっちの黒い服がかっこよさそう!」
「うむ。好きにしろ。おまえが着るものだからな。」
「やったぁ! あっ、バンダナ発見! 母さんが作ってくれた頭巾フードより、こっちの柄がいいな~。」
「……おい、リゼル。シリルの前でそれを云うなよ。」
「わかってるって。」

 初めて見るものばかりが並ぶ店内につき、リゼルの表情は明るい。すれ違う人間という人間に気を取られながらも、現状を楽しんでいるように見えた。獣耳みみさえ隠してしまえば、見た目は人間と変わらないため、ゼニスは無意識にホッとした。他人と異なる特徴は目につきやすく、否定的にとらえられやすい。リゼルが人間と良好な関係をきずけるかどうか、ゼニスの懸念は絶えなかった。
 衣服の会計を済ませたあと、ふたりは武器屋を探して歩きまわった。内政が安定しているコスモポリテスでは、危険物を取り扱う店が少ない。ようやく見つけて立ちどまると、リゼルが鼻をヒクヒクさせた。

「……父さん、血のにおいがする。」
何処どこからだ。」
「この店の中。」
「なに?」
「本当だよ。武器屋の中で誰かが傷ついてる……。」

 面倒事めんどうごとかかわるつもりはないが、負傷者がいるとあっては救助が優先される。ゼニスはリゼルの前にでると、静かに店の扉をあけた。すると、横幅のある男どもが数人で年老いた店主てんしゅを取り囲み、物騒な刃物でおどしていた。

     * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

夏休みは催眠で過ごそうね♡

霧乃ふー  短編
BL
夏休み中に隣の部屋の夫婦が長期の旅行に出掛けることになった。俺は信頼されているようで、夫婦の息子のゆきとを預かることになった。 実は、俺は催眠を使うことが出来る。 催眠を使い、色んな青年逹を犯してきた。 いつかは、ゆきとにも催眠を使いたいと思っていたが、いいチャンスが巡ってきたようだ。 部屋に入ってきたゆきとをリビングに通して俺は興奮を押さえながらガチャリと玄関の扉を閉め獲物を閉じ込めた。

催眠眼で手に入れた男子学生は俺のもの

霧乃ふー  短編
BL
俺はある日催眠眼を手に入れた そして初めて人に催眠眼を使う為にエロそうな男子学生を物色していた。 エロ可愛い男子学生がいいな。 きょろきょろと物色する俺の前に、ついに良さげな男子学生が歩いてきた。 俺はゴクリと喉を鳴らし今日の獲物を見定めた。

ガチムチ島のエロヤバい宴

ミクリ21 (新)
BL
エロヤバい宴に大学生が紛れ込んでしまう話。

前後からの激しめ前立腺責め!

ミクリ21 (新)
BL
前立腺責め。

壁に誰かの下半身があったからヤルことにした

ミクリ21 (新)
BL
壁尻の話。

通販で美少年型カプセルを買ってみた

霧乃ふー  短編
BL
通販で買っておいた美少年型オナホのカプセル。 どれを開けようか悩むな。色んなタイプの美少年がカプセルに入っているからなあ。 ペラペラと説明書を見て俺は、選んだカプセルを割ってみた。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...