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第161話
しおりを挟む「きゃうッ!?」
と、シリルはいちど悲鳴をあげたきり、ゼニスの深い腰つきに声をがまんして耐えた。薄暗い洞窟の最深部で交わるふたりは、この世から隔離された存在のようだった。
「シリル……、平気か……?」
「さ、さっきは、ちょっと痛かったけど、平気だよ……。ぼく、ゼニスとひとつになれて、すごくうれしい……、」
「……そうか、おれもだ。もう少しだけ頑張れよ。……今から出すぞ。」
ゼニスは言葉で合図を送った後、シリルの体内に埋め込んだ生殖器から熱い子胤を放流した。ゼニスだけが秘密の空洞を満たすことができるため、シリルは唯一無二の感覚に「はわぁ~っ!!」と悦びの声をあげた。
「い、いっぱい、おなかの中にゼニスの何かが入ってきたぁ……!!」
「……ああ。これでうまくいけば懐妊だ。」
「かいにん……って、なぁに……?」
「子を身籠ることだ。」
ゼニスはシリルの頬に舌を這わせながら乳房へ触れたりしたが、パキッと、木の枝を踏む遠くの音に気づき、すぐさま腰を引き抜いた。シリルの股から流れる血液と、躰じゅうから放つ活性物質を野生動物の雄が嗅ぎつけて向かってくる。
「……やはり、来たな。」
「ゼニス……? 誰がくるの……?」
「問題ない。おまえは安静にしていろ。そこから動くなよ。」
帯巻きを直したゼニスは剣を手にするなり、鞘を地面へ置いた。荷物の中から着替えを取り出して、シリルの下半身を隠しておく。なるべく周囲に汗や分泌液のにおいを気取らせないためである。脱力状態のシリルは、「ハァッ、ハァッ」と忙しない呼吸をくり返したが、「気をつけてね……」と云って、ゼニスの頼もしい背中を見送った。
シリルの体内に射精されたゼニスの精子は、卵管膨大部まで最初にたどりついた1匹だけが卵子と受精することができる。また、両性具有であるシリルは、カラダの内部に着床の準備がされた子宮内膜を持っている。子宮壁に胚がしっかり定着した時点で、ようやく妊娠が成立する。だが、両性具有は他と生理周期が異なるため、兆候がみられるまで油断は禁物だった。
「リシルドも腹の子も、絶対に傷つけさせやしない……。」
ゼニスは洞窟の入口に立つと、剣を前方に構えて耳をすませた。迫りくる足音は複数にまで増えていたが、戦闘態勢にはいり、襲いくる物体へ容赦なく剣を振りあげた。
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