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第158話
しおりを挟む町の剣闘試合に参加したゼニスは、弱冠15歳という若さで優勝してしまった。
ガキィーン!! カラン、カランッ!
「勝者、ゼニス=ディーン=ルークシードォ!! なんと、初参加の15歳が見事に優勝を決めましたーっ!!」
司会の言葉に場内は、ワァーッと盛り上がる。ゼニスは大会用の長剣をポイッと地面へ放ると、足速に退場した。薄暗い控え室で表彰式の準備を待っていると、ぞろぞろと取材陣が押しかけてきた。出身地や剣術の流派などを訊ねられたが、こたえる義務はなく、無言の姿勢を貫いた。
「……どいつもこいつも、うっとうしい。」
盛大な授与式の後、ゼニスには賞金のほか、無駄な宝飾が目立つ大剣が贈られたが、すぐに金銭に変えることにした。中心部へ足を運ぶ機会に恵まれた以上、帰路へつく前に賑わう露店を見てまわると、地味で使いやすそうな剣を並べる台を発見した。
「こいつをもらおう。」
「むむ? ほう、こりゃ驚いた。少年剣士の登場かい。あんちゃん、いくつなんだい?」
ゼニスは老店主の質問を聞き流し、手に入れたばかりの大剣を差し出した。
「これを売りたい。ついでにその金で剣を買う。」
「どれどれ、よく見せてみろい。……ん? んん!? こいつはまさか……。あんちゃん、もしかして剣闘試合の優勝者か?」
「そうだけど。」
「ひゃ~! 今年はたいそう盛り上がったらしいが、そういうことかいな! いやはや、おまえみたいな若造が大会に優勝したのかい!!」
「文句でもあるのか。」
「いやいや、ないわな。いくらダミーの長剣でやり合うとはいえ、真剣勝負にゃ変わらん。あんちゃん、その若さで、えらく度胸と技量があるなぁ! よしきた。なるべく高値で買い取ってやろう。……しかし、そんな地味な剣でいいのかい? どうせならもっとこう威厳のある……、」
「いや、これでいい。帯にさげて持ち歩きたいから、地味なほうが都合がいい。」
「はははっ、なかなか小生意気な物言いだね~。なんか気に入ったよ、おまえさん!」
武器屋の老人に気に入られても意味がないため無反応を示したが、ますます首をのばして会話を続行された。
「ふんふん。よく見りゃ、たいした男前じゃないか。まだ成長期だろうから、これから背も伸びるわな。いい漢になりそうだ。」
「……どうも。」
将来を高評価されたゼニスは、いちおう礼を口にしたが、否定すればよかったかと思い直した。すると、背後から数人の若い女性が押しかけて来た。
「あの~、すみません。ゼニス様ですよね?」
「わたしたち、大会を観戦していた者です。」
「ご迷惑でなければ、握手してもらえませんか?」
ニヤニヤ笑う老店主からグイグイ肩を押されたゼニスは、仕方なく右手を差しのべた。
「きゃ~っ、ありがとうございます!」
「思ったとおり、近くで見ると藍色の眼をしてる~。かっこいい~。」
大剣の査定が終わり露店を立ち去ったゼニスだが、一躍その名と顔を世に知らしめた結果、いわゆる有名税がつきものとなる。
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