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第147話
しおりを挟む第6王子の寝間にて。
「だ~か~ら~、ごめんなさいってばぁ、ジルさまぁ!」
「キョースケから誕生日を聞くだけで良いと云うのに、まだわからぬのか? 3日目であるぞ!!」
「それがぁ、なかなか難しくってぇ、キョウくんってば、ふだんから口数が多いほうじゃないからぁ、」
「むっ、そうなのか?」
「そうよ~。仕事中なんか、とぉっっっても真剣な顔してるしィ、話しかけようにも、ちょっとねぇ……。」
「ふむ、さすがキョースケだな。他を寄せつけぬ仕事ぶり、実に見事な姿勢なり!」
「ジルさまったら、自分のことみたいに嬉しそう~。」
「ふん。当然であろう。あやつは吾の情人なのだ。後にも先にも、キョースケ以外の男は必要ない!」
「きゃあっ、すっごいステキな科白~。ジルさまはキョウくんにぞっこんなのね~。」
「あやつほど、吾の情人に相応しい男は、おるまい。キョースケは期待以上の大物である。……ゆえに、共寝の回数を増やすべきか検討中なのだ。」
「あらん、いくら大好きだからって無理は禁物ですよ~。閨事は受け身よりも、男役のほうが体力を消耗するものですからね~。」
「なぬ? そうなのか? いつも吾のほうが疲労を感じて先に寝てしまうのだが……、」
「まぁまぁ、ジルさまったら、甘えっ子~。それは疲労じゃなくて、幸福感といってあげてぇ。あぁん、でも、そんな素直なところがかわいらしいわぁ。きっと、キョウくんも同じ気持ちじゃないかしら~。うふふ~。」
「ぐ、ぐぬぬ……、アミィよ、少し静かにしておれ!」
ジルヴァンは顔を赤くして、プイッと横を向く。円卓で向かい合って話すアミィは、「は~い」と返事をして口唇を結んだ。恭介の長所で会話が盛り上がるいっぽう、コスモポリスの住人ではないため、知らない事情のほうが多かった。
また、戸籍の管理は神殿の仕事につき、恭介がこの国へ来てから間もない点においては、ジルヴァンが謄本を入手すれば、すぐに調べがつく。しかも、現時点では私奴の身分で登録されている。あくまでザイールのミスだが、うっかりジルヴァンの目に留まるようならば、誤解は免がれない。
「う~む、こうなったら仕方ない。誕生日の件は、もうよいわ。キョースケには、吾という最大の尽力者がおるのだ。日々の就労をねぎらってやろうぞ。」
「ねぎらうって、キョウくんに何か贈物でもされるンですかぁ?」
アミィが口を挟むと、ジルヴァンは「それでは、つまらぬだろう」と否定する。
「それじゃあ、どうするんですぅ?」
「恒例行事に招待する。」
「えっ? 王族の御前に情人を連れ出すつもりですか~?」
「そうではない。云ったであろう。就労をねぎらうと! キョースケは事務内官として出席させるのだ。」
「あっ、そういえば、就労者の功績を表彰する式典が、もうすぐありましたっけぇ。」
「うむ。吾の推薦とあらば、書類審査を通過している頃であろう。従ってアミィよ、当日はキョースケを会場まで案内せよ。」
「なるほどぉ。キョウくんに勲章を授与させてあげる計画ね~。なんてすばらしいの~。キョウくんは、コスモポリス国の功労者のひとりに選ばれるのねぇ。それは名誉なことだわぁ。」
「そうであろう? キョースケには、今後とも国家へ身を捧げてもらおうではないか。そのために必要な肩書きくらい、吾が用意してやるのだ。」
「はぁ~、なんだか順調すぎて不安だわぁ。」
「不安とな? いったいなぜだ?」
「だってぇ、キョウくんが目立つ存在になりつつあるからぁ、心配なのよぅ。自分より優れてるとはいえ、出世ぶりを見せられるとぉ、劣等感とか憎しみを抱く人間って必ずいるものじゃなぁい?」
「……格が上がるほど嫉みに気をつけねばならない、ということか。」
「そのとおりよぅ。ジルさまと違って、キョウくんの身のまわりには、危険がいっぱいなのよ~。」
「そこまでの配慮が必要とはな……。さて、どうしたものか……。」
すでに痛い目に遭ってしまった恭介は、ボルグから護身術を習得済みである。その事実を知らずに談義するジルヴァンとアミィの杞憂は、結局、取り越し苦労に終わる。
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