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第137話
しおりを挟む第6王子の情人として、ジルヴァンと二度目の共寝を終えた恭介は、血だらけの朝を迎えることになる。もとより、そうなる覚悟の上で、添寝をした。
「なぜ、ひとこともなしに帰ったのだ。……吾を残して、黙って去るとは何事か。」
と、前回の不満を指摘された恭介は、最初のビンタの原因は自分の不始末にあると理解した。指の跡が皮膚につくほど、力が込められていた。寝台で寄り添う恭介が「ごめんな」と詫びると、ジルヴァンはカアッと頬を赤く染めた。
「わ、わかればよいのだ。よいか、こんやは、朝までそばにいるのだぞ!」
「承知しました、王子様。」
「むっ、なんだ、急に改まって、」
「なんとなくだよ。」
恭介は布団の下からジルヴァンの右手をすくいあげると、安物の指環を嵌める指を見つめた。第6王子は基本装備として、イヤリングやネックレスなどをふだんから身につけていたが、共寝の際は恭介から贈られた琥珀の指環だけを嵌めている。恭介もまた、絹衣を脱いだあとは、情人の証である黒翡翠の輪具しか身につけていない。
「キョースケ? どうしたのだ……。」
「うん? ああ、悪い。なんか、信じられねぇなと思ってさ。キミはコスモポリテスの王に即位するかも知れない王子のひとりだろう。オレからすれば、雲上人なのに、こうして、直に触れ合えるなんてよ。」
「吾が王になる可能性は、極めて低いぞ? 継承権があったとしても、候補に名が挙がることは、まず考えつかぬ。優秀な実兄が他にいるからな。」
「……そういった現実的な話じゃなくてさ、なんていうか、オレはたぶん、夢心地の気分なんだ。」
「夢? 貴様は実在しているぞ?」
初心な反応である。
「……キミは、本当にかわいいな。」
「な、なぬ?」
「あのさ、ジルヴァン。連続絶頂ってわかるか?」
「れんぞくぜっちょう? なんだ、それは。」
「簡単に説明すると、性的な快感が最高潮に高まる状態を連続して起こすことなんだけど……。要するに、いちどの共寝で何回も性交渉しちゃダメか?」
「と、突然なにを云いだすのだ貴様は!! 不埒であるぞ!!」
室内にバチーンッ!!と乾いた音が鳴り響く。こんどは反対側の頬にビンタを喰らった恭介だが、大胆な発言に後悔はしていない。できることなら、ジルヴァンとの共寝を、より濃密な時間にしたいという私欲が働いた。
さらに、いくらか機嫌を損ねたジルヴァンから背を向けられたが、時刻は遅く、心身ともに疲労を感じた王子は寝息を立て始めた。
「……おやすみ、ジルヴァン。」
恭介は早朝まで添寝を続けたが、寝相の悪いジルヴァンから鼻筋を強打され、案の定、痛い思いをした。
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