恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第132話

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 シグルトの指が内官布ないかんふの留め具を外そうとするため、恭介は前髪を掴むルシオンの腕を振りはらうと、第4王子の手を制した。

「さすがに、オレにだって情人イロとしての意地がある。ジルヴァン以外の人間に肌をさらすのは、せいぜい入浴時くらいだ。」 

「シグルト様は、キョースケの裸身はだかを見るまでもありませんよ。わたくし、、、、がこの目で確認済みです。下半身には、それなりに“立派なモノ”が付いていました。」

(んな!? ルシオンめ、余計な情報ことを……! この状況で下ネタはずいだろーが!!)
 
 内心ヒヤヒヤしつつ決め科白ゼリフを口にした恭介だが、ルシオンの発言により、あっさり台無しにされた。つくづく、相容あいいれない立場である。いっぽう、シグルトは今にも吹きそうな顔をしたのち、「よかろう」と相槌あいづちを打つ。

「ひと目で、均整きんせいのとれたからだつきをしていると思ったが、肝心かんじんな部位は衣服の上からでは判断できぬからな。よもや貧相ひんそうでなく安堵した。……しかし、シオンの云うとおりならば、第6王子は共寝のたび、さぞ難儀しているであろうな。実弟は気随きずいな性格ではあるが、外的な刺激に弱い体質だ。……ぷっ、はははっ。」

 シグルトは科白セリフ途中とちゅうで笑いだし、恭介の下半身へ視線を落とした。「思うに」と前置きをして下世話を焼く。

「合格だ。イシカワキョースケよ。なにも、シオンに気兼きがねすることはない。私が許そう。実弟を末永く可愛かわいがるがよい。もっとも、ヘマをして愛想を尽かされぬよう注意することだ。情人なぞ、いつでも反故ほごにできるのだからな。」

「……シグルト様は、キョースケを気に入られたようですね。」

 と、ルシオンが穏やかではいられないようすで口を挟む。溺愛するジルヴァンと恭介の関係を黙認するしかない立場とはいえ、できる限り遠ざけたいのが本音である。シグルトは恭介に無用な助言をするため、無意識に手にした鉄の棒を強くにぎりしめた。ルシオンは、自分こそがジルヴァンの支えであり続ける存在で、いちばんの理解者だと、そう信じている。

 今より上の階級を目ざす恭介は、これから先も思わぬ伏兵ふくへいに行く手をはばまれることになるが、不屈ふくつの精神で立ち向かうしかない。  

      * * * * * *
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