恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第127話〈肩書き強化月間〉

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 ダァンッと、背中から床に打ち落とされた恭介は「ぐはっ!!」と、悲鳴をあげた。

「ちょ、ちょっと待ったボルグさん! こんな大技おおわざを習得したいわけじゃなく、もっとこう、サッとできる護身術を教えてほしいンだけど……、ゲホッ!」 
「あん? なんだ、それならそうと先にえっての! キョースケは意外と腰抜けだな! がはははっ!!」  
(うおぉぉぉっ、なんか、すっげぇなぐり返してぇ。いきなり民間人を背負せおい投げするかよ、フツー!)

 ボルグはふんぞり返って笑うため、恭介は「くそっ」と毒舌どくぜつを吐いて立ちあがった。すると、こんどは衣服ころもの上から股間こかんつかまれ、血の気が引いた。

「どうわっ!?」 
「こうやって正面から急所を突く手もあるが、おまえさんはどんな方法で相手を倒したいんだ?」
「倒すっていうか、劣勢れっせいの状態から、どう立て直せばいいのか教えてください……。」
「劣勢からの優位か。うーむ、そうなると状況にもよるが、たとえばどんなだ?」 
「背後から襲われた場面です。」
 
 恭介が速答そくとうすると、ボルグは「やけに明白めいはくだな」と、眉を寄せた。板張りの床に厚口の布を敷いた訓練室で、恭介は体術の指南を受けている。

「……あの、ボルグさん。いつまでさわってるンですか。」
「あ? ああ、悪い。ついな。」

 ボルグは股のあいだをもみもみ、、、、する。その指の動きに背筋がゾワッと寒くなった恭介は、(ついって、なんだよ)とばかり顔をしかめた。性的な事柄において受け身となり得ない体質につき、むやみな接触は不愉快ふゆかいだった。

(ジルヴァンになら、どこを触られてもいいけどよ……。むしろ、触ってくれたほうがオレの細胞が活性化するような気がする。それって、ふつうだよな? 誰だって好きな相手からカラダの一部を触られたら、興奮するよな……?)

 現代の日本では、対人関係が希薄きはくになりつつあった会計士の恭介は、こんなにも他者と肉体的に深くかかわる生活は久しぶりだった。さらに云えば、やたら下半身に興味を持たれる現状が気になった。

(ボルグさんの場合、同性愛とは少しちがうよな。たんに、オレの反応を見ておもしろがってるだけか? ……ますます、殴りたくなってきたぞ。……ってか、よく見ると男前だし、カラダもデカいし、たぶん、一物あっちだってオレより大きいはずだよなぁ。……うん? なんか、ザイールとボルグさんって、お似合いじゃねぇの?)

 デカい、、、男根に興味を示す神官のザイールと、無遠慮だが愛想のよいボルグの顔が頭の中に並んだ。年齢としこそ離れているふたりだが、カップルとして成立しそうな気がした恭介は、ボルグにたずねてみた。

「武官として、人をあやめたことはありますか?」
「お? なんだよ急に。」
不躾ぶしつけな質問で、すみません。実際どうなんですか?」
「あると云えばあるし、ないと云えばない。」
「……つまり?」
いくさってのは、そういうモンなんだよ。どっちの側にも正義とか理想があって、結局、どちらかが信念をあきらめることで決着がつく。……片方がザマを放棄した瞬間、勝者が誕生する。」

 ボルグにしては小難こむずかしい科白セリフを述べ、恭介に武官のごうを語ってみせた。

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