恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第120話

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っておくが、キミには失望しつぼうしたよ。」

 唐突とうとつにルシオンから非難された恭介だが、冷静に対処した。
「誰にでも欠点くらいあるでしょう。オレなんか、穴だらけですよ。」
「キミの“金棒”は満点のようだが?」
(かなぼう? ああ、男根のことか。……なんだそりゃ。下ネタのつもりかよ。ってか、そんなに周りが云うほどデカくもねーよなぁ? まぁ、平均へいきんよりはちょっと大きいかもだけど……、って、なに考えてンだオレは……!!)
 ジルヴァンとの共寝にそなえ、体毛のあちこちを剃るようになった矢先やさき、ルシオンの目にとまる事になるとは、さすがに気まずい空気が流れる。男性器が丸見えの状態をキープしている恭介は、さっさと話題を変えるべきだった。

「こ、こっちとしては、あなたに疑問がありまして、それをどこまで言及げんきゅうしていいのか、悩ましいンですがね。」
「ふっ。はっきり云うね。まぁ、こちらとしても、わざと堅苦かたくるしい言葉を使われるのは好かんよ。くだけた口調で話すがいいさ。特別にゆるす。」
「……そりゃ、どうも。」

 ルシオンは意外と寛容かんようさをしめす。敬語が苦手な恭介は、早速タメ口で話しを進めた。

「それじゃあ、遠慮なく本題だ。あんたは、どうやってオレを見つけたンだ?」
「ほぼ偶然だよ。おれは、夜の散歩にでたまでだ。たまに、頭を冷やしたくなるのでね。……まさか、キミが倒れているとは思わなかった。」
「……それで、寝間ベッドルームに運んだ理由は?」
「むろん、今回の件を内密に処理するためさ。傷の手当てをしたのは医官ではなく、このおれだ。これでも医学の知識を持っている。たところ、全治2週間ほどだな。……それと、襲撃した犯人は、こちらで調べるから勝手に動かないように。」
「なんでそんなことまで……?」
「キミは、仮にも王族の情人イロであろう。しかも、わが義弟の最初の男だ。そう簡単に傷モノにされては困るんだよ。自覚が足りぬようだから、断言しておく。このような粗末な事件を起こし、必要悪に義弟を悲しませてくれるな。情人失格とまでは云わないが、二度はないと思え。」

(……うん? ああ、そういうことか。……なるほど。かなり効果的な牽制けんせいをされちまったな。……少しでも、あんたを疑ったオレも悪いけど)

 恭介の健康は、ジルヴァンとの親密な関係に影響を及ぼす。ルシオンいわく、全治2週間らしいが、それまでのあいだジルヴァンに共寝に呼ばれてしまった場合、余計な心配をかけさせることになる。健康な肉体を維持する努力は情人イロの絶対条件につき、恭介は心の底から反省した。いくら不慮ふりょの事故とはいえ、夜道を歩く際は、注意が必要だったのだ。

(……あとで、ボルグさんに護身術のひとつやふたつ、サクッと教わっておくか)

 それは何気なにげなく思いついた計画だが、自分を襲うよう命じた人物の顔を知る機会を得ることになる。

「それから、きょうの仕事は休みたまえ。キミの上司には連絡を入れておこう。……頭部を強打されているようだから、しばらく安静にしていなさい。キミの内官布ないかんふは、汚れていたので女官に洗わせている。」

「わかりました。色々と助かります。」

 恭介が袖を通した内衣は、ルシオンの着替えのようだ。何から何まで世話になっていたが、やはり、礼の言葉を述べる気にはなれなかった。ルシオンは恋敵こいがたきに当たる存在だが、それについて宣戦布告されたわけではない。たんに、ジルヴァンへの想いを言動にあらわすため、恭介のほうで苦手意識を持つに至る。

(結局、あれだろ。オレさえいなければ、ルシオンは今でもジルヴァンを独占できたンだろうな。兄弟愛のつもりかよ。……こればっかりは、仕方ねぇだろ。オレだって、こんなにジルヴァンを好きになるなンて思わなかったし……。ん? あれ? そういえば、オレはなんて告白したっけ?)

 恭介は、今更のように眉をひそめた。肉体関係を実行する前に、互いの気持ちを確かめ合う手順を失念していた。情人の立場を利用して己の快楽を手に入れたが、気持ちを告げる必要性は充分にあった。

(……くそっ、オレのまぬけめ! 共寝の時、なんでいちばん最初に伝えてやらなかったンだ!!)

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