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第109話〈ひとつになる夜〉
しおりを挟む情人が共寝の際に身につける絹衣がある。〔第22話参照〕
「……うお~、すっげぇ、さらさらしてンな! なんだ、この高級感あふれる肌触りはよ!?」
以前、アミィから渡された荷物の中に、ずっとしまったきりでいた絹衣に、ようやく出番がきた。いそいそと取りだして袖をとおした瞬間、無駄毛を処理した腕に、サラッとした感触を捉えた。
「たしか、腰紐は結ばないンだっけ……。」
ジルヴァンから理由を教えてもらった記憶がある恭介は、胴体に軽く巻きつけた。〔第62話参照〕
「これでオーケー。……ふぅ、あと2時間か。けっこう緊張するもんだな。」
クォーツの腕時計で時刻を確認し、長椅子へ腰かけた。昨晩から気分が落ちつかない恭介は、いくらか寝不足だった。
「これって、ジルヴァンからすりゃ初夜ってやつだよな。……そもそも、オレは最後までやっていいのか?」
いくぶん下品な悩みだが、つい口から出た。もっとも、据膳喰わぬは男の恥とばかり、恭介はジルヴァンに自身の性器をつかう覚悟を固める。
(……そういや、ジルヴァンの寝相には気をつけねぇと、こっちの身があぶねぇ)
アルミナ自治領から帰還した夜、いちどだけ寝台を共有した恭介は、散々な目に遭っている。思い出し笑いをして、静かにその時を待った。ジルヴァンもまた、念入りにカラダを洗い、恭介の到着を待っていた。
王族が共寝をするにあたり、しきたりでは立ち会い人を手配し、とどこおりなく終了するまで屏風越しに待機させる必要があったが、ジルヴァンはそれを排除した。もとより絶対事項ではない。王子が情人と抱き合う空間に、第三者の存在は野暮すぎると思った。なにより、恭介は国王夫妻より公認された正式な情人につき、どのような戯れ方をしても容認される。
「……キョースケ、早く吾の元へこい。……ああ、貴様に会いたくてたまらぬ。キョースケよ。」
ジルヴァンは寝間の扉を見つめ、ひとりそうつぶやいた。
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