恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
51 / 364

第 50 話

しおりを挟む

 恭介が寝間ベッドルームに足を運んだ時、ジルヴァンは裸身はだかで横たわろうとしていた。

「邪魔するぜ。」
「キ、キョースケ!? なにゆえ!?」
 
 アルミナ自治領への出発をあすに控えた第6王子は、突然の来訪者に驚きを隠せない。脱いだ衣服ころもを再び羽織はおると、無粋ぶすいあらわかたをした恭介を振り向いた。室内には蝋燭の火がともされていたが、時刻は真夜中まよなかにつき全体的に薄暗うすぐらい。かろうじて、ジルの姿を視野しやとらえた恭介は、迷うことなく歩み寄った。

「キョースケ、なんなのだ、このような夜更よふけに……、」
「就寝前に間に合わなくて悪い。オレのほうも忙しくてさ。少しだけ話せるか?」
「う、うむ、ゆるす。」 
 5日分の作業指示を書き出した紙片メモを執務室の長机テーブルに残し、情人イロの認可証を使って直接ジルをたずねた恭介は、女官のひとりと役目を代わり、アルミナへ同行する旨を伝えた。
「そうか、それは構わぬ。われとて、貴様きさまと共にけるのはたのしみが増えるというものだ。」
「その口ぶりだと、いちばんのタノシミ、、、、は他にありそうだな。」
「むろん、それはブトウ畑である。3年前任命祝典に訪ねた時、吾は17歳だったゆえ、名物めいぶつの果実酒をひと口もむことができず、非常にくやしい思いをしたのだ。次こそは、たらふく、、、、呑んでやろうと決めていた。」
(ってことは、コスモポリテスでも飲酒は二十歳はたちになってからか。ライン引きは日本と同じだな……) 
 日々の暮らしの中で、それとなく王国の情報は収集しゅうしゅうされてゆく。もっとも、恭介のいちばんの関心は王子自身である。寝台ベッドに並んで腰をおろすと、互いの顔を見つめ合った。

「キョースケ、」
「なんだ?」
「……キスを。」
「了解。」
 
 ジルに望まれるカタチで、恭介は軽く気息きいきを合わせた。
(あんまり深入ふかいりすると、オレの男根ナニあばれそうだからな……)
 恭介は、いつでもジルを抱くことができる健康なカラダを維持していたが、ふたりが寝台の上で愛し合う日は、もうしばらく先となる。
「それじゃ、あしたな。おやすみ。」
 出発の時刻を聞きだした恭介は、それだけで退室しようとしたが、「待たれよ」と声がかかった。
「貴様は供人ともびと衣装ふくを持っているのか?」
「うん? ああ、そっか。さすがに内官布ないかんふでついて行くわけにはいかないよな、」
「身だしなみは大事である。あすの朝までに用意させておこう。アミィから聞いたが、貴様は王宮の前に建つ関係者専用の住居で暮らしているそうだな。部屋の番号を、通路に待機する女官に知らせておくのだ。あすは、届けられた衣服ころもを着てくるように。」
「了解。」
 恭介は、ジルの頬にキスをするため顔を近づけたが、相手に先を越された。ジルはほっぺたにチュウ、、、、、、、、をすると、「おやすみっ」と云って布団ふとんくるまった、、、、、。不意打ちを喰らった恭介は、
(あ、あぶねぇっ、つところじゃねーか!!)
 下半身のけものが荒々あらあらしく覚醒めざめようとしたが、なんとか寸前すんぜんしずめた。恭介の欲情をあおった張本人ちょうほんにんは、その顔を隠して寝たフリをしている。
(くそ……、小悪魔かよ……)
 仮にも、ジルヴァンはこの国の王子である。恭介は忍耐にんたいいられた。

 翌朝、鏡の前で寝グセをなおす恭介の元へ、豪勢な衣装と着替えが届けられた。
「おはようございます。イシカワさまでしょうか?」
「え? いいえ。わたしはザイールと申しますが……、あの、これはいったい?」
「ああ、悪い、ザイール。オレの荷物だろうから受け取っておいてくれ、」
 手が離せない恭介に代わり、大きな白い布袋を引き受けたザイールは「ごくろうさまです」と云って、配達人はいたつにんを見送った。
「キョースケさま、こちらの荷物は、なんですか?」
外泊着がいはくぎだよ。きょうから5日間、仕事の都合つごうでアルミナに行くことになったンだ。だから、帰りは6日後になると思う。よろしくな。」
「そうだったのですね。なんだか寂しくなりますが、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
「ああ。ブドウ畑が有名なんだってな。土産みやげに果実酒を買ってくるよ。」
「それは愉しみです。ありがとうございます。」
 恭介にほのかな恋愛感情をいだくザイールは、出張の準備を急ぐ姿を見つめ、少し残念な気持ちになった。ザイールにとって、恭介とのふたり暮らしはせつなくも平穏で、この生活が長く続けばいいのにと思っていた。
 
     * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ペット彼氏のエチエチ調教劇場🖤

天災
BL
 とにかくエロいです。

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる

海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

処理中です...