41 / 364
第 40 話 〈まちがわない男〉
しおりを挟む盗賊により村から連れ去られたシリルだが、本人の意識とは関係なく発情の兆しがあらわれた。まず最初に気がついたひとりは、シリルを担ぐ男である。肩になにか柔らかいものが当たり、若い獣人の呼吸も乱れだす。
「おい、ちょっと待ってくれ。なんか、こいつのようすが変だ、」
そう云って立ちどまり、シリルのカラダを地面へおろした。残りのふたりも側までやってきて、内ひとりが怖いもの知らずの性格につき、シリルの肩から布を剥ぎ取った。途端に、盗賊3人「あ!?」と同時に叫ぶ。
「なんだ、こいつは!!」
「女だったのか?」
「いや、よく見ろよ。ついてるぞ!」
シリルの上半身は女体化していたが、股のあいだには男性器がついている。まさかの両性具有を手に入れた3人組は、その場で談議を始めた。
「こりゃあ、いい! なにかの書物で見たことがある。こいつは両性体の獣人にちがいない。下手すりゃ、高値で売れるぞ!」
「おいおい、いいのかよ、そんなことして。依頼主は獣人そのものを連れて来いって云ってたよな? どうせ手懐けるつもりだろうよ。」
「それなら、もう1匹捕まえに行けばいいだけの話だ。」
「ええーっ? またあそこまで行くのかよ。こっちはひとり殺られてるんだぞ!?」
盗賊のふたりが話し合う最中、もうひとりの男はシリルの呼吸を楽にしてやるため、口を塞ぐ布を解いた。
「……こいつ、大丈夫なのか……。なんだか、やけに苦しそうだけど、病気とかじゃないよな……。」
いくらか心配になり獣人の顔を覗くと、生理活性物質を真近で吸い込み、頭がグラついた。
「……うっ、なんだこの感じ、」
息苦しく喘ぎ声を洩らすシリルを前に、男の理性は崩壊する。己の欲望のままにシリルの足を掴み、股を左右にひらかせると、自身の暴走した下半身を露出させた。
「あっ!? おまえ! 何やってんだよ!」
「気は確かか!? そいつは商品になるんだぞ!!」
今にもシリルと肉体をつなげようとする男を、他のふたりが止めにはいる。
「ばかが! 獣人に興奮してどうする!」
「そうだ、そうだ! こんな野蛮な連中に……、れ、ん、ちゅう……に……?」
しかし、止めにはいる男たちも意識が朦朧となり、下半身が熱を帯びて凝固してゆく。もはや、気狂い状態に陥った3人は野生動物のように雌を獲り合い、互いに襲いかかる。殴る蹴るをくり返すうち、やがて、怖いもの知らずの男がふたりに勝利して、さっそく裸身になった。
「……はぁ、はぁっ、はぁっ、」
男は、よだれをボタボタと垂らしながら、あお向けに倒れて意識が混濁しているシリルの胴体へ跨がった。
「……おれの雌だ、……おれの、」
すでに、邪魔者はいない。シリルのフェロモンに誘惑され、仲間割れした盗賊3人は凄まじい勢いで傷つけ合い、怖いもの知らずの男の手によって、ふたりの息の根は止められてしまった。
「……ははっ、あーっはっはっ!!」
男は高らかに笑うと、本能のおもむくままシリルの膝を掴み、生殖行為というよりは快楽を優先して肉体をつなげようとする。
「おれのものだ……、おまえは、おれの……!!」
男は、シリルとひとつになる優越感に浸り、挿入を開始した。
発情中のシリルは、自我を保つことができないほど、意識は乱れ、記憶も曖昧になる。だが、体じゅうの細胞がゼニスを求め、無意識に名前だけは何度も呼んでいた。興奮作用が落ちついたあとも、しばらく放心状態が続き、心身ともに無防備となり、精神が安定すまでに要する時間には波があった。数分間と短いときもあれば、半日以上かかる場合もある。
シリルの状態が通常に戻ったとき、辺りは薄暗くなっていた。裸身であることはあまり気に留めず、ひとりきりでポツンと森の中にいる状況が理解できなかった。
「……ディラン?」
いつもなら必ず近くにいる従者の名前を呼んでみたが、返事はない。
「ディラン、どこなの、」
現在地を夜空の星の位置で確認すると、腰をあげて歩きだす。
「……変だな。どうしてぼくはこんなところにいるんだろう。」
ふと、シリルの足取りは重くなる。下半身の違和感に気づいてよろめくと、その背後から伸ばされた腕に、上膊を捉われた。
* * * * * *
1
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる
海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる