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第80回[対価]
しおりを挟む「それで? 肉体で払うことにしたのか?」
『この子ったら、覚悟はきまっているくせに、いつまでも、うじうじと、焦れったくてね。だったら、肉体労働がいちばんさ。』
十日ぶりに狩谷家を訪ねた礼慈郎は、奥の書斎へ顔をだすなり、英理に抱きつかれた。飛英の気持ちを代弁する声に耳をかたむけながら軍服を脱いで裸身になると、外出中の鷹羽が戻るまえに、英理と肌を合わせる展開となった。
『……ねぇ、軍人さんにとって、あたしたちは性処理の愛人に過ぎないとしても、だったら尚更、しっかり抱いてくれなきゃ意味がないわぇ。……あたしはね、快楽主義の本能に付き合って、この身を捧げているわけじゃない。誰かに求められなけりゃ、存在価値が消えちまうんだ。それほど薄弱なんだよ。』
英理は朱い口唇で笑みを浮かべ、布団のうえに仰臥すると、重なってくる礼慈郎の接吻を受けた。互いの舌を絡め合っているうち、全身の細胞は活性化し、心拍数も上昇していく。飛英にかかわらず、人間は不足している知識や感覚を、他者から適切に補うことにより、幸福感や恩恵を実感できる。己の欲望に迷うのではなく、愛の徴を交わし合う性的なつながりを善と認め、目的を達するために全力を尽くすのが、理性の基準なのだ。したがって、飛英の不安や、英理の不満といった感情を取り除く方法は、ひとつしかない。
『……あっ、んんっ!』
英理に必要とされる刺激と快楽を施すため、青年の陰茎を擦りあげる礼慈郎は、愛液でぬれた指で、奥まった開口部をならそうとした。
『ハァハァ……、い、いいから、はやく、軍人さんの大砲で、あたしを毀しておくれ……、』
指づかいだけで昇天しそうになる英理は、うっとりとした表情で軍人の顔を見つめ、手足の力を抜いた。礼慈郎は(無意識に)眉を寄せたが、英理の膝を立てると、体内領域へ男根を挿入し、軽く腰をふった。
『すごい……熱いわぇ……、』
「……英理、聞け。おまえは、おれに抱かれなければ意味がない存在だと云ったな。……笑わせるなよ。織原飛英こそ、望んで手に入れた永遠ではないのか。」
肉体をつなげた状態で問いかける礼慈郎の魂胆は、相手に逃れる隙をあたえないためである。案の定、英理は紫紺の眼を見ひらき、ひどく驚いた。
✓つづく
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